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スマートフォンの理想と現実

ソニーXperia Z躍進からウィルコム消滅まで
スマートフォンをめぐる2013年の出来事を振り返る

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第57回】 2013年12月26日
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11月:SIMフリーiPhoneの衝撃

【概要】
 11月22日、AppleはiPhone 5sとiPhone 5cのSIMロックフリーモデルをAppleストアにて販売開始した。購入時にキャリアとの契約が不要で、通信方式と電波帯域が一致すれば、いずれのキャリアのSIMでも利用可能。これまでもAppleストアでiPhoneを購入することはできたが、従来はいずれかのキャリアと同時契約が必須で、端末にもSIMロックがかかっていた。

SIMフリーiPhoneが日本のモバイル産業に投じた一石 - ダイヤモンド・オンライン

アップル、SIMフリーのiPhoneを国内発売 - ワイヤレスワイヤーニュース

【解説】
 全キャリア対応を果たした次の一手として、アップルがSIMフリーiPhoneを打ち出した。モバイル分野に特化した話題としては、個人的には今年一番驚いたニュースでもある。

 本連載でも触れた通り、日本で一番売れているケータイであるiPhoneがSIMロックフリーになったということは、名実ともに通信事業者が「土管化」したことを意味する。そして土管を選べる自由を手にしたのと同時に、いろいろな事業者が「土管業」へ自由に参入できる可能性も示した。

 いまはまだ、モバイルの通信サービスに特化した従来型のMVNO事業者と、SIMフリー端末を求める一部の利用者が、賑わっているだけである。しかし、利用者と事業者の、土管を巡る二つの自由が組み合わさって、魅力的なサービスやパッケージが登場した時、おそらく通信産業の構造は変わり始めるだろう。

 場合によってはアップル自ら、その魅力的なサービスやパッケージを、デザインして提供するかもしれない。あるいは固定通信事業者だって可能性はあるし、さらには通信とはまったく関係のない小売業やメディア事業者も、触手を伸ばしうる。

 モバイル通信事業者が半ば寡占していた富を目指して走り出す、そんなゴールドラッシュが起きるとき、モバイルの通信事業者は掘られる側の金脈となるのか、あるいはゴールドラッシュに乗じて商機を見出す、ジーンズやつるはしの商人となるのか。来年から再来年にかけて、こうした攻防と雌雄を決する動きが、矢継ぎ早に登場するだろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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