7月3日から毎週木曜に掲載の本連載は、15回にわたり大企業の事例を中心にソーシャル・ウェブ革命がもたらすエモーション × コミュニケーションという新しい図式について議論してきた。
本連載であげた日米欧12社の事例を、単に読み物として面白かったと終わらせては進歩がない。そこで今回は締めとして、経営の視点からエモーション × コミュニケーションという企業革新について議論をまとめ、本連載のひとまずの締めくくりとしたい。
エモーション×コミュニケーション
ソーシャル・ウェブがもたらす企業革新
これまでの15回をまとめると、おおまかには次のような流れとなる(各回タイトル見出しの一部を示した)。
■エモーション × コミュニケーション=企業モデルの革新
第1回 ザッポスの感動連鎖サービス
第2回 効率重視のデル・モデルと米ザッポスの“反常識”経営
第3回 米ザッポスはいかにして顧客を虜にするのか?
第4回 デルが顧客との対話に目覚めた
4回に渡り、新たなモデルを示すザッポスと近年までモデルとされたデルを取り上げ、比較した。エモーション × コミュニケーションという新たなモデルと従来型の企業モデルの対比軸がみてとれる。
コミュニケーションと心の時代には、かつてのデルのような「マシーン」的な企業モデルでは限界がある。顧客の心と距離が生じると「デル地獄」のようなしっぺ返しも起こる。
様々な面で、ザッポスは古い教科書の逆なのだが、デルもザッポスを追いかけ始めたという事実が興味深い。
■エモーションの追求
第5回 バンダイホビーセンター驚異の感動創造術
第6回 アップルは製品を開発せず顧客が感じることをデザインする
第5回と第6回は、バンダイとアップルという多くのファンを持つメーカーを取り上げた。形は違うが、2社とも驚異的な感動創造術に腐心している。つまり、顧客のエモーションに徹底的に注力している。こうした例は、小さな飲食店やメーカーなどオヤジさんが魂を込めている中小企業などではみられるが、大企業では希薄になりがちだ。
この2社はもっぱらファンが自発的に行っているコミュニケーションが主で、自らは控えめである。もっとも、レゴのように自らコミュニケーションを促進することでさらに価値を高めることができる可能性はあるだろう。
また、アップルの製品を開発しない製品開発、つまり顧客が感じること(UX)のデザインは、これからのメーカーのあり方を示している。そのためには顧客とのコミュニケーション、そこからの「気づき」が要となる。