ごく簡単に説明しよう。同じものが同じ値段で買えるという購買力平価説に従うと、例えばいま、マクドナルドのハンバーガー1個が米国で1ドル、日本で100円なら為替は1ドル=100円になる。米国では毎年2%ずつ物価が上昇するとすれば、5年後にマック1個の値段は約1.1ドル、日本の物価上昇率が0%だと100円のまま。5年後はマック1個は米国で1.1ドル、日本で100円なので、1ドルは100円÷1.1ドル=約90円となり円高になると予想される。白川日銀時代はデフレ脱却を目標としていたとしても、実際には円高政策になっていたというわけだ。

 これが異次元金融緩和によって、2%のインフレターゲットを明示し、大量のマネーを市場に注ぎ込む。つまり、円高政策から円安政策への一大転換が行われたという意味で、すでに構造は大きく変わっている。

 異次元金融緩和の効果は三つのルートで実体経済に波及する。一つが円安による輸出の増加。現在は、まだ輸出数量に大きな伸びが見られないが、円安効果の浸透によって輸出数量も伸び始め純輸出が増加する。米国を始めとする世界経済の回復もこれを後押しする。

 二つ目が設備投資の増加。異次元金融緩和によって予想インフレ率が高まっていくため、実質金利(名目金利-予想インフレ率)が低下する。実質金利が低下すると、企業の設備投資は増える。日本経済の長期停滞で企業が保有する設備の使用年数が長期化していることも、設備投資が増えると見る理由だ。

 三つ目のルートが、企業収益の改善が賃金増加となって広がっていくこと。これが消費税増税に伴うマイナスのインパクトを和らげる。

 第2の理由は公共投資がそれほど減らないと見ていることにある。消費税率のアップは、今年4月に続き、1年半後の15年10月にも8%→10%への引き上げが予定されている。最終判断は安倍首相が行うが、15年度予算の政府原案が決まる今年暮れまでには引き上げるか否かを決断するとみられている。となると14年度の第1四半期(4月~6月)は消費税引き上げの反動減で成長率は大きく落ち込むことが間違いないだけに、財務省としては続く第2四半期(7月~9月)は高い成長率を実現し、15年10月の引き上げにつなげたい。だから、強気派は公共投資はそれほど落ちず、景気を支えると見る。