わが国家電メーカーが、イノベーションの心を一時的に忘れたことを悲観する必要はない。かつてソニーは、トランジスターラジオやウォークマン、トリニトロンテレビ、ハンディーカムなどで世界市場を席巻した。当時の雄姿は、イノベーション企業の代名詞のようだった。

 そのソニーがファイナンスなどの分野に進出し、欧米流のコングロマリットを目指して進み始めると、「世界で最も新しいものを最初につくる企業」という最も重要な要素が削られてしまった。ソニーのソニーたる所以を、削ぎ落してしまったことになる。

ソニーはまだダメになっていない
今こそ「変革の経営」へ移行せよ

 ただし、「ソニーはもうダメだ」と考える必要はない。かつての大切なコアコンピタンスの企業文化を取り戻せばよい。もちろん、それが簡単なことでないことはよく理解している。しかし、イメージセンサーなどの世界屈指の技術力を持っているソニーなら、経営がその気になれば十分にできるはずだ。

 それは経営者の問題だ。重要なポイントは、経営者が本気でそうした文化を取り戻し、企業のイノベーションの機能を復活させることを目指すか否かだ。家電メーカーと並ぶ、わが国を代表する産業分野である自動車メーカーは、ハイブリット方式や様々な新技術を世に送り出し、現在でも世界の頂点に立っている。

 家電と自動車とを比較すると、自動車の方が圧倒的に部品点数が多く、わが国の“組合わせ技術”を生かしやすいメリットはあるものの、家電メーカーも工夫次第でわが国企業の優位性を生かせる部分はあるはずだ。

 わが国家電メーカーにとって最も必要な要素は、非連続系の変革を実践できる経営者だろう。もし企業の中にそうした人材がいなければ、外から人材を調達することも必要になるだろう。そうした勇気を持つべきだ。

 一方、外部の人材が常に適しているとは限らない。抜擢した人材が不適切であれば、容赦なく退けることも必要不可欠である。