ペンシルベニア州では、激変緩和等を目的とした小売料金への上限価格規制がつい最近まで続いていた。経産省委託報告書によると、2006年以降、順次上限価格規制が解除されているとのことだが、改めて調べてみると、同州の既存電力の上位5社(これら5社で家庭用需要の75%を供給)が上限価格規制を解除されたのは、2009年末と2010年末(上位5社中1社が2009年末、4社が2010年末)。つまり、ペンシルベニア州はつい最近まで電気料金の上昇を規制で抑え込んでいたわけで、この事例で自由化と電気料金の関係を論じるのは無理筋である。

 経産省委託報告書も、ペンシルベニア州については「小売自由化開始以降も、プライスキャップ(上限価格規制)による規制料金が残っていたため、競争の影響(自由化の影響)についての判断は困難である」としている。

 他方、1/11論考は「燃料費の変動と、租税公課の増加と物価変動を除外したところ、残る値(残差)に顕著な上昇は見られなかった」として、これを根拠に「ペンシルベニア州では、自由化の結果電気料金が上がった可能性は否定されるべき」としている。

 しかし、料金規制が残っていたのに、そのようなことがなぜ言えるのか。また、ATカーニーの分析によるグラフ(図1)で、上限価格規制が順次解除され始めた2006年以降に着目すれば、残差は上昇傾向にあるようにも見える。自由化の結果、電気料金が上がった可能性は否定できないのではないか。

◆図1:海外での電力自由化による家庭用料金変遷(米国ペンシルベニア州、ATカーニー分析)……週刊ダイヤモンド2014年1月11日号「自由化で料金上がるか? 先進国に見る電力改革」(ATカーニーパートナー笹俣弘志氏著、以下「1/11論考」)より抜粋

 そもそも1/11論考は、なぜペンシルベニア州を取り上げたのだろうか。「料金上昇の事例として挙げられることの多い」ためとしているが、つい最近まで上限価格規制が残っていた同州を料金上昇の事例として取り上げるのには無理があるだろう。そのような論考を私は見たことがない。

 1/11論考は、経産省委託報告書を強く意識しているようだが、同報告書は米国の事例としてペンシルベニア州以外にニューヨーク市、カリフォルニア州、フロリダ州も取り上げている。これらのうちペンシルベニア州が電気料金の上昇幅が特に大きいわけではない。なぜ、より料金上昇幅の大きいニューヨーク市とカリフォルニア州を取り上げなかったのだろうか。

 まさか結論ありきで、都合よく説明できる事例を選んだわけではないと思うが、いずれにせよ、敢えてわざわざペンシルバニア州を取り上げたことは、私には不可解なのだ。