カラ売り規制を課すから
電力安定供給は大丈夫?

 政府・経済産業省は今、電力小売全面自由化や発送電分離を軸とした“電力システム改革”なるものを進めようとしている。現在、一般家庭を中心とする小口需要家に対しては、電力10社がそれぞれの供給区域で独占的な電力供給をすると同時に、料金規制を伴う「供給義務」が課されている。

 電力小売を全面自由化すれば、「供給義務」を負う主体がいなくなってしまう。供給義務を負う主体がいなくなることで、生活必需品たる電気の安定供給は維持できるのかという疑問は当然出てくる。経産省の“電力システム改革専門委員会報告書(2013年2月)”にも、次のような記載がある。

―― これまで、供給力・供給予備力の確保は、供給義務を課されている一般電気事業者が担ってきた。小売全面自由化に伴って一般電気事業者の供給義務を撤廃することとしており、その後も電力の供給途絶を生じさせないためには、供給力が確実に担保できる新たな枠組みが必要である ―― (同報告書40ページ)

 この当然の問いに対して経産省が出した答えは、“小売事業者に対して、自らの供給の相手先の需要(販売量)に応じた供給力の確保を義務付けること”であり、経産省はこれを“供給力確保義務”と称している。この“小売事業者”には、発電設備を持たずに、卸電力市場から電気を調達して需要家に販売する事業者、いわば“電力小売ブローカー”も含まれる。

 茂木敏充経済産業相はこれを“カラ売り規制”と呼び、このカラ売り規制を課すから安定供給は大丈夫だ、と先の国会で答弁していた。