最近、ゼロがいたるところで目につく。映画では邦画「永遠の0」が大ヒットしている。洋画でも「ゼロ・グラビティ」が驚くべき映像で話題になっている。本でも、堀江貴文氏の『ゼロ』(ダイヤモンド社)が売れている。ネットで寄付を募り全国で無料講演会を開いたり、本の制作過程をすべて公開するなどの付随プロジェクトも面白い。

 それに、都知事選での原発ゼロだ。実は本稿執筆時点では細川氏の公約はまだ出されていないが、本稿が掲載される23日は都知事選公示日なので、細川氏の公約が出ている状況だ。

小泉氏の「原発ゼロ」は筋金入り

 細川氏の公約はこれまでたびたび公表延期になってきたが、目玉の「原発ゼロ」の他、「簡素で優美な五輪」、日本橋の上を走る首都高速道路の撤去など景観・老朽化対策、「待機児童ゼロ」など社会政策、国家戦略特区の活用などとなっているようだ。

 細川氏の原発ゼロを後押しているのが、小泉純一郎元総理だ。実は小泉氏は原発ゼロを、2011年3月の福島第一原発事故の後に言い出していた。その後も、非公開の場所では自然エネルギーのほうがいいと言い続けてきた筋金入りだ。

 昨年1月に亡くなった加藤寛氏の遺言でもある。加藤氏といえば、小泉氏に郵政民営化を教えた慶応大学時代の恩師だ。加藤氏も3.11以降、原発ゼロに意欲を燃やし、死の直前まで言っていた。筆者も加藤氏の身近にいたのでよく覚えている。加藤氏のお別れの会にも、小泉氏はわざわざ来てくれた。

 小泉氏が今原発ゼロにこだわるのは、尾崎行雄(1858~1954年)の生き様もおおいに関わっているだろう。小泉氏はしばしば講演で憲政の神様・尾崎行雄の言葉「人生の本舞台は常に将来に在り」を引用する。何歳になっても将来のために行動すべきという戒め。尾崎行雄は94歳になってもまだ将来のことを考えていると、小泉氏は首相時代の講演で何度も言っていた。