いよいよ通常国会で2014年度の予算審議が始まる。その中身を評価すれば、税収増を当て込んで、財政赤字を減らす一方歳出も膨張してしまったと言わざるを得ない。歳出を抑制できないので、アベノミクスによる高い成長率と消費増税を見込んでも、2020年度の財政再建(基礎的財政収支の均衡)は達成できない。財政再建を達成するには、楽観的な成長率や会計間の操作などを抑止する必要があり、経済財政諮問会議に財政政策を検証する機能を持たせるべきである。
明治大学公共政策大学院教授
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年・日本評論社)、『日本の財政』(2013年・中公新書)。
1月24日、安倍総理は、通常国会冒頭の施政方針演説で、「経済の再生なくして、財政再建なし」、「経済の好循環を創り上げ、……財政健全化目標の実現を目指します」と述べた。経済成長が財政再建に重要であることは否定しないが、我々国民はこれを信用してよいのだろうか。アベノミクスは従来の成長戦略とは異なると主張するかもしれないが、現在の巨額の財政赤字と借金は、これまで経済が成長すれば財政再建できると言い続けた結果だからである。本稿では、去る12月末に発表された2014年度政府予算案と1月20日に発表された「経済財政に関する中長期試算」を分析し、アベノミクスで財政が健全化するのかについて述べたい。
アベノミクスで財政が健全化?
施政方針演説では、アベノミクスによって成長率が高まり、財政が健全化していることが強調されている。例えば、5兆5000億円に上る2013年度補正予算の財源は、成長の成果である税収増によって賄い、国債の追加発行は行わないとしている。また、2014年度予算でも、基礎的財政収支が、昨年8月につくった中期財政計画の目標を上回る、5兆2000億円改善するという。要は、アベノミクスは、初年度から功を奏していると言っているわけである。
最初にこの2013年度補正予算を見よう。ポイントは、法人税が1兆3510億円、所得税が8870億円増えて、一般会計全体では税収が2兆2580億円増えている。この他、税外収入の3659億円、前年度剰余金の9108億円を含めると、一般会計の歳入は全体で約3.5兆円増える(復興特会の前年度剰余金1兆9273億円を加えると、一般会計全体の補正予算総額が5.5兆円となる)。これらの税収増と既定経費の減額(1.5兆円)を、競争力強化関連経費(1兆3980億円)、防災・安全対策(1兆1958億円)、地方交付税交付金(1兆1608億円)などに使うとしている。