数ヵ月前、馬雲氏が社内で、南極までアリペイの業務を展開させようと号令を出した。アリペイのその驚異的な成長があるからこそ、馬雲氏はそのような自信と覇気を持てたのだ。

ネット版「紅包」が大ヒット

 ユーザー数を見ても、第3の決済手段の王者はアリペイだと誰もが認めるようになった。しかし、青天の霹靂、急変が起きた。その信じられない急変をもたらしたのがなんと先述したその紅包だ。

 6億のユーザーを有するWeChatは今年の春節の前に、ネットで簡単に紅包を配れるというソフトを立ち上げた。そのソフトを利用すれば、グループになっている仲間向けにランダムに決められた金額が入る紅包を配ることができる。

 もらう人もゲーム感覚でその紅包のソフトをクリックする。空くじがない宝くじのようなもので、クリックする人によってもらった紅包の金額が違う。もらった人も感謝の言葉を述べるとき、ちょっと気のきいたコメントをする。たとえば、私がもらったある紅包の金額は13.10元だったが、その礼状としてメッセージに、「○○さん、ありがとうごいます。1310です。一生要霊(一生、期待していることは思うままに実現できる)」と書いた。

 紅包をもらった人は自分の銀行カードをWeChatを運営する会社・騰訊(Tencent)の「財付通」というモバイル決済機構に登録すれば、紅包のお金が振り込まれる。やり方はいたってシンプルでわかりやすい。

 こうして騰訊の傘下にある財付通はあっという間に2000万人のユーザーを1億人以上にした。しかもコストもまったくかけずに実現できたのだ。あまりにも急な成長だったので、人々は財付通というモバイル決済機構の名前すら覚えておらず、「微信支払(WeChat支払い)」と勝手に名付けて呼ぶほどだ。

 しかし、これはスタートにすぎない。なぜならその時点では春節はまだ始まっていなかったからである。都市部在住の若者が帰省するのに伴い、若者の間ですでにブレイクしているWeChatの紅包サービスが、地方都市にいる彼らの親戚や友人に広まることになるにちがいない。インターネットの最先端からは外れているようなこうしたユーザーが、もし紅包サービスを通じて「WeChat支払い」の利用を始めれば、騰訊がそのモバイル決済戦略によって莫大な数のユーザーを手中に収めるだろう。