「カプチーノを1つ。スクウェアで支払います。Taroです」
これが筆者が住んでいる米国サンフランシスコ周辺の、馴染みのカフェでのオーダー風景だ。この3つのフレーズだけでオーダーと支払いが済んでおり、紙幣やコイン、クレジットカード、あるいはiPhoneに触れる必要はない。あとはちょっとした談笑をしながら、コーヒーが出てくるのを待つだけだ。
日本ではタッチでの支払いが普及した。筆者は日本に戻ると、東京メトロ・ANAのロゴがついた非接触IC(PASMO)内蔵の一体型クレジットカードを使っている。鉄道、コンビニ、コインロッカー、公共駐車場、自販機などに拡がり、利便性が高まり、オートチャージ機能は手放せなくなった。しかし米国での体験に比べると、サービスを受ける際の店員との会話や接する時間は減る傾向にある。
全国の鉄道系ICカードとの間で乗り入れを開始し、利便性が高まるPASMOだが、どうも日本と米国との間で「スマート」の価値観が異なるように感じる体験だ。
日本にも上陸したモバイル決済システムの企業スクウェア。スマートフォンのイヤホンジャックに取り付ける小さな白いクレジットカードリーダーは、モバイルによって小売りや小規模な顧客ビジネスの風景を一転させている。サンフランシスコ周辺で生活していると、買い物で利用しない日の方が少なくなるほど、普及が進んでいる。
サンフランシスコの新オフィスに引っ越しをしたスクウェアを訪問し、創業者のジャック・ドーシー氏にインタビューを行った。スクウェアが目指すこと、そして日本市場について、どのような見解を持っているのか。我々のデジタルな日常をどのようにデザインしようとしているのか。
まずは、支払の体験を変えることが先決
スクウェアを創業したきっかけについて、ドーシー氏はこんなストーリーを披露してくれた。
「米国ではあまり現金を持たず、1枚のプラスティックカードだけで何とかしようとすることが多い。しかし地元の小さなカフェや店舗ではクレジットカードを受け付けてくれないこともあり、近くのATMを探して現金を引き出さなければならないことが多々ありました。こうした問題を解決するために、シンプルなアプリをダウンロードし、店舗にクレジットカードリーダーを無料で送ってカードに対応するサービス、スクウェアが誕生しました」(ドーシー氏)