メリットと言われることは
本当にメリットなのか

――しかし、村上さんは現役の東海村村長だったとき、原発立地自治体としてのメリットを受けてきました。いま「脱原発」を唱えていらっしゃいますが、これまでメリットを受けてきたじゃないかと指摘されることはないのでしょうか。

 そりゃ、言われますよ。何度も言われました。JCO臨界事故のときもマスコミから「東海村はメリットを受けてきたじゃないか」って。確かに、東海村は原発の中心だったし、原子力は村の象徴だった。ただね、メリットって何なんだってことですよ。メリットだって言われていることは、本当にメリットなのか。

 原発を作ると他の産業は育たないんですよ。もう、それはメリットじゃないよ。すべてが原発に一本化されてしまう。

 原発を作ると、その地域は持続能力を失っていってしまうということです。原発による繁栄はいずれ限界が来るものです。東海村にも昔、3号機、4号機を作ろうという話があった。結局は面積が足りなくて話は立ち消えた。でも、柏崎刈羽はどんどん作っているでしょう。今は7号機まである。

 あれは財政が苦しくなるたびに作っている。1機作ると、一時は固定資産税がたくさん入るけど、2年目以降、どんどん少なくなるからなんです。リプレースすればいいって言う人もいるけど、原発1機が廃炉になるまで40年近くかかる。自治体の財政はそれまで待っていられない。リプレースって言ったって、そんなに簡単にできません。

 それで事故が起きたら何もかも失ってしまう。原発による繁栄っていうのは、一炊の夢なんだよね。

 すべて、ありとあらゆる商売は、原発に依存することになる。街中の洋服屋、生活雑貨屋、旅館、飲み屋、すべてです。みんな努力しなくなるんだよ。だって、努力しなくても食っていけるんだから。原発からの発注っていうのは、極めて利益率が高いんだよね。みんな定価で買ってくれるんだから。そりゃ、努力しないよ。

 例えば衣料品店、村民の方を向いてません。作業着とか靴とか、原発作業員用のものを仕入れて売ればいい。黙っていても、売れる。こんないい商売ないよ。

 旅館もそう。原発作業員向けだから、雑魚寝で風呂は共同なんだよ。J-PARK(原子力を含む幅広い分野の最先端研究を行うための陽子加速器群と実験施設群の呼称)ができたとき、世界中から研究者が集まるから、個室にするとか、部屋を改装しなきゃダメだって言っていたんだけど、やらない。

「改装なんていい。作業員が来るから」ってみんな言いますよ。田んぼのど真ん中で宿屋が成り立つのは、必ず作業員が泊まりに来るっていうのがわかっているからね。あれ、回って来るんだわ、定期的に。