9年ぶり9度目の優勝を果たし、喜ぶ鹿島の鈴木優磨(中央)ら選手/12月6日、茨城・メルカリスタジアム Photo:JIJI
鹿島アントラーズの復活を告げる9度目の優勝で2025シーズンのJ1リーグが幕を閉じた。国内外で獲得した通算タイトル数を歴代最多で、かつライバル勢の追随を許さない「21」とした鹿島だが、国内三大タイトルに限ればリーグ戦と天皇杯の二冠を獲った2016シーズンを最後に、実に8年間もの空白期間が生じていた。今シーズンから指揮を執るクラブOBの鬼木達監督のもと、常勝軍団が遂げてきた変化を探っていくと、日本でも馴染みの深い四字熟語「温故知新」に行き着く。(ノンフィクションライター 藤江直人)
指揮官として戻った鬼木達監督
驚愕した「選手たちのプレッシャー」
タイトルを争うライバルとして対峙してきた鹿島アントラーズと、指揮官として戻ってきた鹿島アントラーズはまったく異なるチームだった。プロサッカー選手としての第一歩を踏み出した古巣へ、実に四半世紀以上の歳月をへて今シーズンから復帰した鬼木達監督を驚かせたものがあった。
「選手たちが思っていた以上にプレッシャーのなかで戦っていた。自分の想像以上でした」
鬼木新監督のもとで手にしたリーグ戦優勝を加えて、鹿島が獲得した国内三大タイトルの合計数は「20」に達した。他に2桁に達しているクラブはない。いつしか鹿島には「常勝軍団」という異名がつき、ファン・サポーターを含めて、鹿島に関わるすべての人々から常にタイトルの上積みを期待されてきた。
こうした状況が、鬼木監督が指摘した想像を絶するプレッシャーを生み出してきた。そして無冠状態が続くほどプレッシャーは選手たちの心を蝕み、本来は出せるはずの力を封じ込めてきた。
たとえばリーグ戦では、8度目の優勝を果たした2016シーズン以降も鹿島は常に5位以内でフィニッシュしてきた。しかし、ここ一番で勝てない。
その象徴が勝てば自力で連覇を決められた2017シーズンの最終節。ジュビロ磐田と引き分け、川崎フロンターレの初優勝をアシストした鹿島は長く、暗いトンネルに入り込んでしまった。







