一方、23年ぶりの史上最高益となる日立のある経営陣は「7800億円の赤字転落がすべてだった」と語っている。

「最大の転機は7800億円というとんでもない赤字(2009年度)を出してしまったことに尽きる。23年ぶりの最高益だと誉めていただくのはありがたいが、正直、実感はない。まだわが社は構造改革の途上だというのが、偽らざる実感だ」

 日立はいまインフラビジネスに情報革命を持ち込んで、社会全体にイノベーションを起こそうとしている。世界でも屈指の水準だが、閉鎖的だった研究開発力の土壌に風穴を開けることで新しいビジネスを創出しつつあり、大転換のきっかけは巨額赤字の恐怖と危機感だった。

 だがソニーから伝わってくるのは「危機感」というよりも「迷走」だ。ソニーの社員たちは今も「世界のソニー」を自負しているが、本当の「ソニーらしさ」とはなんなのか、社内に明確なコンセンサスはあるのだろうか。そこに“迷走”の原因があるように思えてならない。

VAIOを捨て、イメージセンサー注力へ
日本で消えた“SONY”信仰

 もっとも2年ぶりの赤字転落に直面したソニーが無策なわけではない。事業構造の転換に動き出したことは間違いない。

 VAIOブランドで一時は一世を風靡したパソコン事業からの撤退を表明した。投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京千代田区)に売却する。

 1997年にVAIOが発売された時の衝撃はいまでも忘れない。無味乾燥なモノクロの世界にはまりこんでいたノートパソコンの世界に、ソニーは銀色やバイレットなどのカラーを持ち込み、そのスタイリッシュなデザインは米国でも大きな話題になった。ニューヨークのJFK空港の手荷物検査場で、私のVAIOを見た米国人ビジネスマンが「それがVAIOか」と覗き込んできたこともあった。ソニーがアップルを凌駕していた最後の時代だった。

 それから17年が過ぎ、IT環境は様変わりした。ノートパソコンからタブレット、さらにはスマホへと端末が多様化したばかりか、ITの世界はクラウドやビッグデータ等々、端末から離れた情報のソリューションビジネスが急拡大している。赤字のパソコン事業に見切りをつけるのは至極当然のことである。