4月4日からBS11の対談番組『財部誠一の経済深々(しんしん)』(金曜夜9時)が始まった。私とゲストだけの30分の真剣勝負である。まるまる30分間、キーパーソンの話をテレビで聞くという機会は、じつのところ、ありそうでない。良質なドキュンタリーでも取材した相手の話は、主張の核心を凝縮したコメントを数十秒単位で引用するのが一般的である。有名タレントをゲストに招く“対談番組”も随分と増えたが、私が知る限り、事前収録後に、面白いコメントに絞り込んだり、差し障りのあるコメントを削除したり、重大なメッセージであることに気づかずスルーしてしまったりといったことが起きてしまう。

 だが『経済深々』は番組自体が生放送であるため、編集はできない。稀に日程調整ができない場合は、事前収録もあり得るが対談は30分撮りきりで、編集はしない。

 4月11日のゲストは菅義偉官房長官だった。TPPをめぐる菅義偉官房長官の発言は圧巻だった。

米国との激しい攻防のさなか、
菅官房長官が窺わせた“交渉の最終局面”

 日米がTPP交渉で激突するさなかである。4月下旬、米オバマ大統領の来日までの合意は絶望的だと報じられてきた。甘利TPP担当相は9日に来日した米国通商代表部のフロマン代表と2日間、十数時間に及ぶ異例の長時間交渉を続行したが、さしたる進展はなく、「大きな距離感がある」と疲れ切った表情をテレビカメラの前にさらした。

 暗礁に乗り上げている理由は米国の強硬姿勢だ。米国は関税ゼロの原則論に執着する。一方日本は関税撤廃の対象外としてきたコメ、麦、砂糖、牛・豚肉、乳製品の重要5項目については「10年以上の年限をかけての関税撤廃も認めない」との国会決議もあり、窮屈きわまりない。