東京都港区に建つ、完成間近の億ションで、工事に多数の欠陥が見つかり、購入者の契約解除にまで発展した。三菱地所レジデンスと鹿島というビッグネームが組んだ物件に何があったのか。
Photo by Tomoko Tsumoto
「一方的に解約だなんて、納得がいかない」。1月最後の土日に開催された説明会は、契約者の怒号が飛び交い、6時間にも及ぶ修羅場となった。
騒動の舞台は、三菱地所の完全子会社、三菱地所レジデンスが開発し、3月20日に引き渡す予定だったマンション「ザ・パークハウス グラン 南青山高樹町」だ。
最多価格帯は1億4000万円という超高級マンションで、全86戸。同社が都心の最高級ブランドと位置づけてスタートした「グランシリーズ」の、記念すべき第1弾物件となるはずだった。
施工はゼネコン業界の盟主・鹿島だ。大手デベロッパーとスーパーゼネコンがタッグを組んだ、鳴り物入りの物件だったのだが、昨年12月に内部告発によって欠陥工事が発覚。「少なくとも1年以上は修理に時間がかかる」(三菱地所)ことが判明し、違約金を支払っていったん、すべての契約を合意解約する方針が決まった。
主な欠陥が見つかったのは、スリーブと呼ばれる、配管を通すための穴だ。
このマンションの場合、全部で6000のスリーブが設計されていたにもかかわらず、なんと、そのうち1割に当たる600カ所でスリーブが開けられていなかったり、位置が間違っていたのだ。
さすがに全体の1割は異例としても、スリーブの施工忘れ自体はたまにあるという。そんなときには、コアボーリングと呼ばれる、コンクリートへの穴開け作業で対応するが、これもいいかげんな工事が行われていた。
通常はきちんと調査をして、鉄筋を傷つけないように穴を開けるところを、「調査をせずにコアボーリングをしたため、鉄筋が切れてしまった箇所もあった」(三菱地所)。鉄筋が多少切れても、構造の安定性にはさほど影響はないとはいえ、許される行為ではない。
しかも、欠陥発覚の発端はインターネット掲示板への、匿名の書き込みだったというお粗末ぶりだ。