中古住宅を選ぶのは、まるで「ロシアンルーレット」のよう。欠陥住宅や事故物件など、どんなものを掴むかわからない一方で「お宝ヴィンテージ住宅」ともいえるお得な中古住宅が見つかることも。なぜこのようなことになっているのか。

玉石混交の中古住宅市場

 実は、中古住宅の査定の場面では、建物についてあくまでも表面的なところしか見ていない。最も重要なのは築年数で、あとは大きさや間取りや設備を見る程度と非常に大雑把だ。

 中古住宅の査定には、特段の資格は必要なく、不動産仲介業の営業担当者が行うのが通常の姿だ。(財)不動産流通近代化センターが作成した「中古住宅査定マニュアル」があり、表向きはこのマニュアルに従って査定を行うことになっているが、実際、現場ではこのマニュアルどおりの査定はほとんど行われていない。約10年で半値、25年程度でゼロになるという、非常に大雑把な感覚で、中古住宅の価格査定が行われているのが実情である

 私自身、この業界に始めて足を踏み入れたときの衝撃は今でも忘れられない。不動産という、数千万、時には億単位の買い物なのに、売主も買主も、不動産仲介の担当者でさえも、取引に関わる誰も建物のことをきちんと把握しないまま、取引が行われているのだ。結果「何をつかむかわからない」というロシアンルーレットのような市場が出来上がっている

 では、このような玉石混交の住宅市場で、どうやって「お宝ヴィンテージ住宅」を見つけるのか。実は欧米では、中古住宅を購入する際には、建物の専門家である「ホームインスペクター(住宅診断士)」が、その知識や経験に基づいて一通りのチェックを行っている。このチェックを「ホームインスペクション(住宅診断)」という。

 先進国では、住宅取引を行う際に、第三者の建物専門家であるホームインスペクター(住宅診断士)が建物をチェックするのは常識だ。日本ではつい最近になってやっと根付き始め、これから常識になろうとしている。