マイクロソフトの新しいCEOが決まった。同社在籍22年のサティア・ナデラ氏である。
モバイルとクラウドで遅れをとり、かつての輝きを失っているマイクロソフトの次期トップには、外部からのCEOを招いて内部改革に大鉈をふるってもらうのではないかという予想もあったが、それは外れた。それにしても、人選が難航したのは確かのようだ。
ナデラ氏は、マイクロソフトのインサイダーとして、オンラインサービス、検索エンジンのビング、エンタープライズ用サーバー、クラウドプラットフォームなどの部門に携わってきた。だが、テクノロジー業界も含めて広くその名を知られた人物ではない。
まず、発表された時に多くの人々が驚いたのは、彼がインド系であるという点。テクノロジー企業にはインド人がたくさんいるし、インド系の起業家も無数にいる。だが、今なお3000億ドル規模の企業であるマイクロソフトのトップとして、外国出身者のインド人が抜擢されたことは、ちょっとした驚きだった。意外にも、マイクロソフトの柔軟さを示す兆候と言える。
ナデラ氏はインドのハイデラバードで生まれて、大学卒業までをインドで過ごした。コンピュータ科学を学ぶために米ウィスコンシン大学大学院へ留学したのが、アメリカに渡った時だった。その後シカゴ大学のビジネススクールでMBAを取得した。
最初に勤めたのはサン・マイクロシステムズ。その後マイクロソフトへ移り、経験と昇進を重ねてきた。
エンジニア出身で勉強熱心
「謙虚なチームプレーヤー」
ナデラ氏は、先の2代のCEOとはまったく異なるタイプのようだ。同氏を表現するのによく使われているのが、「謙虚」という言葉。競争心をむき出しにしてソフトウェア市場を占有したビル・ゲイツや、見るからに熱情的で、ステージの上でもしばしば叫び声を上げていたスティーブ・バルマーとは一転して、穏やかで温和な印象だ。どちらかと言うと、若い世代のエンジニアたちに近いキャラクターだろう。
また、ナデラ氏はチームプレーヤーとも言われる。マイクロソフトも少し前までは、内部での競争心を煽って業績を上げさせていたようなところがあるとされた。だが、ナデラ氏のようなアプローチは、クラウドやサービス時代で各部門を横断した協力が必要な時には、無駄な衝突を防ぎ、効率的に結果を生むことにもつながると期待されている。