――苦境に陥るのは、主にどんなタイプの企業ですか。

 傘下に多くのグループ企業を抱えるような輸出主導の大企業は、実はあまり苦しくありません。下請けの中小企業は売り上げに応じて納税する義務がありますが、輸出業者は免税となるので、消費税を支払わなくてよいだけでなく、下請け企業が払ってきた消費税を還付されるからです。

 企業によっては数千億円の還付金を受け取っているところもあり、こうしとたところは、消費税が5%から10%に上がれば、還付金もこれまでの倍になって大儲けです。さらに、アベノミクスで円安になればダブルで儲かるので、彼らにとって消費税増税は大歓迎でしょう。

 深刻なのは、消費税で収益を吸い取られてしまう中小企業です。よく考えると、これは滅茶苦茶な仕組み。現在、日本企業の7割が赤字で法人税を支払っていないと言われますが、日本企業の8割を占める中小企業がこの状況では、ますます法人税収は減るでしょう。大企業が儲かればそれが中小企業にも波及すると言われた「シャワー効果」なんて、激化する下請け企業の値引き競争の前では、幻想に過ぎません。

 こうした状況のなか、昨年末の日銀短観は絶好調でしたが、「3ヵ月後の景気見通し」については、大手企業30業種のなかでプラスと回答したのは10業種に止まりました。また、中小企業の見通しはほとんどがマイナスのまま。

 つまり企業も、様々な不安要因を見据えて、「今がピークで景気はもうすぐ悪くなるのでは」と考えている。これでは、やはり給料は増えないでしょう。

増税を迎える家計の最大の不安は
基本給が上がらないことに尽きる

――最大の問題は企業への悪影響であり、それが社員の生活に波及するというわけですね。個人の給料が増える見通しはないのでしょうか。

 今のところはないですね。実際、厚生労働省の『毎月勤労統計』では、昨年12月までの19ヵ月間にわたって、現金給与総額に占める基本給や役職手当などの所定内給与は前年比マイナスが続きました。ボーナスや残業手当などの所定外給与は上がっていますが、勤労者の基本給は上がらない。消費税増税による家計の最大の不安は、基本給が上がらないということに尽きるでしょう。