10月1日、安倍首相は2014年4月に消費税率を8%に引き上げる最終判断を下した。いよいよ決定したとなれば気になるのが、実際に増税される来年4月までに何をいつ買えばベストか、ということだ。思わず私たちは税金が上がる前に…と“駆け込み消費”に走ってしまいがちだが、果たしてそうしたお金の使い方は正しいのか。消費税引き上げに反対の立場を示してきた経済アナリストの森永卓郎氏に、消費税増税前後の資産運用術と生活防衛術を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
来年4月の消費税8%開始で
アベノミクスは“一巻の終わり”に
――今回の消費税率引き上げ決定は、日本経済、庶民の生活にどのような影響を与えるでしょうか。
経済アナリスト、獨協大学教授。1957年7月12日生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業(80年)。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局等を経て、91年から(株)三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))にて主席研究員を経て、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。
Photo by Toshiaki Usami
私は来年4月から日本経済が失速し、マイナス成長になる可能性が極めて高いと考えています。そして、“アベノミクス一巻の終わり”になるでしょう。
7月の消費者物価指数は前年同月比で0.7%上昇しています。日本銀行は今年4月、2年以内に消費者物価上昇率を2%にするという目標を掲げていますが、今のペースでいけば、その中間地点である来年4月には1%に達し、年度平均では1.5%の上昇となりそうです。
さらに、これはエコノミストの間ではほとんど異論のないことですが、消費税率を3%引き上げると消費者物価に少なくとも2%波及すると言われています。つまり、インフレターゲット部分が1.5%、消費税増税の部分が2%で、来年度は少なくとも計3.5%も物価が上がることになります。
では、給料はどうなるのか。実はこれだけ景気が劇的に改善しているにもかかわらず、厚生労働省が行う毎月勤労統計調査によると、残業代なども含めた月給(所定内給与+超過労働給与)は前年比でマイナス0.7%と、14ヵ月連続でマイナスになっています。確かにここ最近、特別給与は増加していますが、今後給料が上がるとは私には到底思えません。
一方の高齢世帯の公的年金については、本来であれば物価スライドで物価が上昇すれば、支給額が増えるはずです。ところが、デフレの際に物価スライドをさぼって支給額を減らさなかったため、それを解消する意味でも、今年と来年は1%ずつ年金がカットされます。また、2004年の年金制度改正で導入されたマクロ経済スライドが、インフレになると発動されるので物価が上昇しても、年金は増えないという事態になるでしょう。
つまり、現役世帯も高齢世帯も全く収入が増えないなかで、物価だけ3%以上上がるのが、来年度に起こる事態なのです。消費は日本のGDPの6割を占めていますから、それで経済成長するはずがありません。