カギを握る夫婦の会話力

  一般に、夫婦の会話は時がたつほどに少なくなるようだ。よく言えば「あ・うん」の呼吸だが、悪くとれば、相手への関心が冷めた証かも……。しかし、マイホームを買うときはそうはいかない。

 ある不動産仲介会社の担当者は「夫婦のコミュニケーション密度が成功のカギを握る」と断言する。「ご夫婦の会話がない、話が噛み合っていない、それからファッションが極端に違うご夫婦も要注意です」。

 こうした夫婦は希望物件が二転三転したり、肝心な時に意見が合わずに絶好のチャンスを逃すケースが多いそうだ。そこで、今回は妻とのケンカを回避するコミュニケーション術を考えてみよう。

 まず、悪い例。最近マイホームを取得した3人の既婚女性に「切れそうになった夫のひとこと」を聞いた。あなたにも心当たりがあるかも……。

「いい加減にしろよ」

 斉藤英子さん(仮名、40歳)が切れたのは、夫の武さん(同、42歳)の「いい加減にしろよ」のひとこと。

 武さんはシステムエンジニアで毎晩帰りが遅い。そこで、英子さんがせっせと情報を集め、毎週末はふたりでモデルルーム巡りをしていた。モデルルームを見ること、なんと30物件以上。夜は住宅雑誌に載っていた「賢いマンション選びのチェックリスト」に照らし合わせて検討を重ねてきたのだが、ある日、武さんがうんざりした顔で「いい加減にしろよ」と言ったのだそうだ。

 「私の努力を全く理解してくれない」と英子さんは激怒。一方、武さんは「最初は真面目につき合っていましたよ。でも妻はチェックリストが絶対で、ひとつでもマイナスを見つけるとダメ。妻の言う完璧な物件なんて予算内であるはずがないです。こんなことを続けていても消耗するだけ。正直言ってつき合いきれなくなったんですよ」。

 武さんによくよく聞くと、本当に言いたかったのは「予算内で完璧な物件はないのだから、まず、選択条件に優先順位をつけて候補を絞り込もう」という「見解」だった。それがつい「いい加減にしろよ」という「感想」に簡略化(?)され、英子さんの努力を全面否定したようにとられてしまったわけだ。

 たぶん、武さんも相手が他人だったなら、「感想」はぐっと飲み込んで、「見解」あるいは「説明」をしただろう。マイホームを買うときは言葉を惜しんではいけない。コミュニケーションの達人とは聞き上手な人。そのうえで、相手にとってわかりやすい(受け入れやすい)言葉を選ぶことだ。