世界の市場を覆う不安の目は、新興国から米国に移ってきた。市場参加者は経済指標と米連邦準備制度理事会(FRB)の動向を固唾をのんで見守るが、動揺は簡単には収まりそうにない。
日本の金融市場が大きく揺れている。1月24日、日経平均株価は終値で304円の下落。その後も乱高下を繰り返しながら、30日には377円下落、2月4日には611円下落で、ついに1万4000円割れ目前となった。
最近の急激な株価上昇で、いつ調整入りしても不思議ではなかったとはいえ、昨年末からの下落幅は2283円に及ぶ。2月4日の東証1部値上がり銘柄は13にすぎなかった。この間、企業は業績の上方修正や最高益予想が相次いだにもかかわらず、である。ドル円相場も一時1ドル100円台まで円高に巻き戻した。
発火点となったのは、地球の裏側にあるアルゼンチンだった。1月23日、同国の通貨ペソが暴落。これがトルコや南アフリカ共和国、ロシアなどにも飛び火し、これらの通貨も軒並み暴落した。
加えて、中国の経済指標の悪化が同国の景気減速への懸念となり、これが世界経済の足を引っ張るという連想につながっていった。
世界の市場は、一気に“リスクオフ”に傾いた。
もっとも、新興国への不安は表層面にすぎない。こうした国々がリスクを抱えているのは事実だが、新興国全般、まして世界に波及するようなものではない。中国に関しては、習近平政権の下、過度な投資に頼った無理な高度成長を安定成長に軟着陸させるべく、構造改革を図っているさなかであり、景気が減速するのは“周知事項”といえる。
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実際、新興国通貨をめぐる混乱は一段落しつつあったが、さらに動揺は増幅していく。
そのトリガーとなったのが、米連邦公開市場委員会(FOMC)が1月29日(日本時間30日)に決めた量的緩和縮小(テーパリング)の続行だ。追い打ちをかけるように、2月3日(日本時間4日)に発表された1月の米ISM製造業景況指数は、前月の56.5から市場予想を大幅に下回る51.3に急減速した。