新卒採用の選考を通年で行う方針
談合に加わらぬソフトバンクは偉い
大学と企業との関係を考えた場合に、将来の改善につながる可能性(あくまでも可能性だが)を感じさせるニュースが2つあった。
1つ目は、ソフトバンクが大学の新卒採用に関して、選考を通年で行う方針を持っているとの報道だ(『日本経済新聞』2月25日朝刊)。2016年度採用の新卒者に対して、2015年春にも内定を出すし、大手各社が内定を出し終わった期間にも選考を通った学生には内定を出すという。
主に経団連加入企業の一種の談合協定的な申し合わせでは、2015年の8月から内定が出始めることになるから、早く就職を決めたい学生にとって便利だ。他社を志望して内定確保が遅れた学生にとっては再チャレンジへの機会にもなる。ソフトバンク自身にとっての効果が大きいのは、前者だろう。優秀な学生を他社に先駆けて確保できる。
もともと、企業が内定を出す時期を申し合わせるという談合に意味はない。学生の就職活動が学業の邪魔になっているので、企業側で学生の選考をなるべく後送りして欲しいというのが、おおむね大学側の意向であるようにも見えるが、就職を早く決めて学業に専念できる学生もいるはずであり、選考時期に規制ないし談合を持ち込むのは余計なことだ。
ソフトバンクは経団連加盟企業だが、新卒採用に関する経団連倫理憲章には署名していないという。したがって同社は、合意を破るというのではない。それにこうした合意自体が、かなり大きな部分において不透明な形で有名無実化している。
筆者は、ソフトバンクの新方針に大賛成だ。他にも追随する企業がどんどん出て来ると好ましい。企業は自由競争でいいし、学生は大人なのだから、当事者同士で好きに決めさせたらいいのだ。
「学業と就職活動の両立」という点で、大学教師の立場から企業側にあえて希望を述べるなら(筆者は週に2コマ授業を持っている)、会社説明会や面接を、大学の授業とぶつからない土曜日・日曜日、あるいは平日の夜、春夏の休みの期間などに集中して行ってくれると助かる。