4学期制の導入が当面の方針に
議論を経て動き出す「東大改革」

 8月19日の『日本経済新聞』朝刊に、浜田純一東京大学学長が、「4学期制、変わる東大」と題する記事を寄稿されていた。記事の小見出しは、「留学しやすい環境に」と「入試、点数至上主義改め」であった。

 東京大学は、浜田学長が提案していた「秋入学」の路線に向かうのかとばかり思っていたが、学内の議論を経て、4学期制の導入が当面の方針となったようだ。

 浜田学長は記事の中で、「国際水準の学事歴」、「国際水準の教育内容・方法」、「国際水準の社会システム」が3点セットで動くことで、初めて大学にも社会にもグローバル化を受け止める力が培われると強調している。

 推測するに、グローバルな大学評価の中で東京大学のランキングが今ひとつ高くないことと、世界ではもちろん日本でも最優秀水準の学生が東京大学に魅力を覚えなくなることに、危機感を持たれているのだろう。

 だが率直に言って、4学期制という今回の改革方針そのものが、東京大学の教育の質を向上させることに直結するものではないし、「モノトーンの学習からカラフルな多様性にあふれた学習へ」とか「専らペーパーテストによる選抜システムに風穴を開ける推薦入試制度の計画」といった、浜田氏が「教育スタイルの転換」と称する試みの方向性には、魅力を感じない。

 魅力云々と言っても、筆者は(満55歳だ)これから大学に入ろうと思っているわけではないし、近く大学受験する子どもを持っているわけでもない。何に対する「魅力」なのかというと、東京大学の卒業生に感じる魅力を問題にしている。

 浜田学長が言う東大改革を経たとしても、東大と海外の他大学の交流は深まるかもしれないが、東大卒業生がより魅力的になるようには思えない。端的に言って、ぜひ一緒に働きたいと思うような優秀な学生は増えないだろう。