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スマートフォンの理想と現実

中国勢の台頭と、
急速にコモディティ化するスマートフォン

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2014レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第59回】 2014年2月28日
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来客で賑わうサムスン Photo by Tatsuya Kurosaka

 ただ、昨年のMWC2013あたりから、彼らに「悩み」を感じていた。ブースの様子を見るだけでも、「なんでもできるけど、なにをしたいのかわからない」というような、全体に総花的な展示であった。言葉を選ばずに言えば、元気だった頃のNTTドコモが日本国内の展示会に出展したときは、こんな感じだったかな、という印象である。

 結論としては、今年もその状況は大きく変わっていなかった。昨年サムスンが業績面でつまずいたことを考えると、今年も彼らは低迷するのだろうか――もちろんその可能性も考えられるが、今年は状況が少し異なるように思っている。

 その時々の景気動向にも左右されるので、実際には蓋を開けてみなければわからないという前提だが、おそらく今年は日本も含めて、先進国の消費者の「端末買い換え」の季節となるはずだ。割賦販売のサイクルも含めて、そろそろ大きな買い換え需要が喚起されることが「予め計画されている」年なのである。

 おそらく今年のサムスンは、こうした「先進国の買い換え需要」を確実に奪取しにいく戦略を採ったのだろう。MWC2014をギャラクシー5のお披露目に選んだのも、他の新製品に埋没せずにアピールできると踏んでのことだと思われる。実際、htc、ノキア、モトローラ、そして日本勢のいずれも、あまり元気がない。

 敵失に近い形である以上、ややコンサバティブではあるが、確実に需要を取りに来るために、プロダクトの品質も含めて、やれることはすべてやった――これが今年のサムスンの印象である。

 ただ、そんなサムスンにとっての最大の「ブラックスワン」は、早ければ今夏にも登場すると見込まれる、iPhone 6であろう。そしてその気配は、MWCではまったく感じられない。これが彼らにとっての悩ましい現実である。

 一方、かつてサムスンとしのぎを削ったLGは、ブースこそ賑わいを見せていたものの、正直あまりパッとしなかった。端末の品質は高いし、ライフスタイル提案もしていて、彼らなりにできることをやっていることはよく分かるのだが、すべてにおいて競合と似たような製品となってしまった以上、あえて積極的にLGの製品を買う理由が見当たらない、という印象である。そしてこれは、htcも同様だった。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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