今年の第2四半期に米ヒューレット・パッカードを抜いて、ついに世界1位のパソコンメーカーの座を手にした中国レノボ。パソコン業界の“巨人”は次の狙いをモバイルに定めて、アップルとサムスンを追撃すると宣言した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)

 世界首位のパソコンメーカーのトップは今、“スマートフォンの伝道師”として奔走している。

 9月11日、NTTドコモが本社を構えている山王パークタワー。来日していた中国レノボ(本社・北京)の楊元慶会長兼CEOが、同行するスタッフと共にするりと玄関口を通り抜けていった。

 ドコモを代表して出迎えたのは眞藤務常務などの経営幹部たち。米アップルのiPhone5sの発表会に参加するため、不在にしていた加藤薫社長に代わり、この役を任されたという。

「あいさつもそこそこに、レノボ製のスマートフォンの紹介があったようです」(ドコモ関係者)

 いったい、どんな端末なのか。

 例えば、楊会長がいつもスーツのポケットに入れている「K900」。商品企画からデザイン、生産まで一貫して自社で手がけたフラッグシップモデルで、今年5月に中国で発売されたものだ。

 アルミニウムを使った金属筐体は冷やりとした高級感のある仕上がりで、インテルの高性能チップ「Z2580」を搭載し、カメラ部分は1300万画素のソニー製だ。1台2999元(約4万5000円)と売れ筋機種の倍以上の価格だが、現地のビジネスマンを中心に人気を呼んでいる。

 日本では未発売の最新機種を、会長自ら日本のキャリアに持参する理由。それは言うまでもない。

 同じ週、レノボの経営幹部はドコモに続き、ソフトバンクやKDDIを相次いで訪問。一連のキャリアへの行脚は、今後の日本参入のタイミングを見据えたものだ。