では、イノベーションを起こすための義憤を持つにはどうしたらいいのか。そのためには、自分の中にぶれない基軸を持って、アンテナを張るしかない。

 その基軸とは、(広い意味においても、狭い意味においても)社会とはどうあるべきか。そのために自分は、また会社は何をすべきなのか。どう生きるべきなのか。そうした社会観や人間観を持つことだと思っている。

 不動産・住宅情報サイト「HOME’S」を立ち上げた、ネクストの井上高志氏は、会社員としてマンションを販売していたときに、ある若い夫婦を担当。彼らが気に入る物件を紹介することができたのだが、残念ながらローンの審査が通らなかった。

 その時の、その夫婦の失望ぶりに心が打たれて、他社の物件情報まで提供し、何とか彼らの想いを遂げる手伝いができた。当然夫婦には感謝されたが、当時の上司には当然叱責された。自社都合ではなく、お客様の笑顔を作り続ける仕事がしたいと、その時、井上氏は思ったと言う。

 そのことをきっかけに、当時の不動産業界が顧客に必ずしも正直ではなく、物件に関する情報もあまりオープンにはしていないということが気になり始める。つまり顧客は、限られた情報で一世一代の大きな買い物を強いられている。その情報の非対称性に彼は強い違和感を持ち、義憤を抱いた。不動産売買における情報の非対称性を何とか解消したいと彼は思った。それが今日の事業のスタートだった。

 社会はこうあるべき。そうした基軸を持つことで、解決すべき課題にぶつかる。それを何としても解消したいという義憤を持ったときに、人はイノベ―ターになる。

 では、そうしたアンテナはどうすれば、磨かれるのか。その点について次回、考えてみたいと思う。

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筆者である野田稔さんと伊藤真さんが塾長を務める
人材の再教育を通じて雇用の流動を高め、社会全体での終身雇用を目指す
「社会人材学舎」のホームページができました。
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