
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第16回(2025年10月20日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「え、あんたが遊女?」
第4週「フタリ、クラス、シマスカ?」(演出:松岡一史)。
傅(堤真一)が亡くなったため、織物工場を売り払うことになった。
平井(足立智充)が平謝り。やはり元は善人で、工場を立て直すために心を鬼にしていたようだ。
いまのように遅くとも解雇の1カ月前には告知しないといけないなんてことはなく、急にほかの仕事を探さないとならなくなるトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)。
困っているときに借金とりは容赦ない。森山(岩谷健司)は「いよいよ遊女になるときが来た」と迫る。この森山、名前が善太郎という皮肉。平井と同じでたまたまこういう仕事だから任務に忠実なだけなのかもしれない。
でも松野家はそんなことを考える心の余裕なんてない。撒く塩もない。
一部始終を遠く離れて(といっても狭い家だからそんなに遠くはない)見つめていた銀二郎(寛一郎)が猛然と家を飛び出し、森山を追いかける。仕事を紹介してくれと銀二郎に言われ、「え、あんたが遊女?」とびっくり。
ここで主題歌。
「日に日に世界が悪くなる」「気のせいかそうじゃない」。いやいや、そうじゃなくない。
こうして銀二郎は遊郭の客引きの仕事をはじめた。純情で真面目な銀二郎は、なみ(さとうほなみ)に誘われてドキドキ。
主人公一家が遊郭の傍で生活していて、主人公が遊女になる瀬戸際に立たされ、その夫が遊郭の客引きとして働く。いかがわしい世界で生きる主人公たち――朝ドラ革命である。
だがそれを許さない人物がいた。
「我が家の格が下がる」と怒りだしたのは――。