2月26日、都内で開かれたLINEの発表会で、通話事業に本格参入することが明らかになった
Photo by Takeshi Kojima

 2月下旬、「モバイル・ワールド・コングレス」がスペインで開かれた。世界最大のモバイル関連展示会で、モバイル事業者にとっては新商品のお披露目の場だ。

 日本の関係者らも、こぞってスペインに押し寄せるさなか、日本で衝撃的な発表がなされた。無料メッセージアプリLINE(ライン)が、通話事業に本格参入することを明らかにしたのである。

 その中身は、この3月から、アプリの入っていない携帯電話や固定電話にも、LINEのアプリから通話できるというもの。しかも、大手キャリアの通話料金が1分42円かかる中、携帯電話向けで1分6.5円からという格安料金だ。

 通信網に接続するだけで4円程度かかるため、もうけはほとんどない。それでも「通信キャリアにはできないことをやる。料金設定も追求していきたい」(舛田淳・LINE執行役員)と意気軒高だ。

 LINEの通話本格参入は、通信キャリアのお株を奪いかねない。というのもLINEは、これまでメッセージやアプリ同士の通話のみならず、ゲームやEコマースなどを展開。それにアプリ外への通話まで加われば、キャリアサービスと遜色がなくなるからだ。

 世界3億7000万人まで成長した鍵は、携帯電話番号と電話帳情報をアプリで押さえたことだ。

 電話番号は、基本的にキャリアが本人確認をした信用できる情報で、個人を特定する上でこの上ないもの。加えて、人間関係のつながりがわかる電話帳情報を使って、利用者を爆発的に増やしてきた。

 今、LINE同様のアプリに注目が集まっている。2月だけで、楽天が「Viber(バイバー)」を9億ドル(約900億円)で買収。米フェイスブックは、「WhatsApp(ワッツアップ)」を190億ドル(約1.9兆円)で買収すると明らかにした。

 各社が大枚をはたいてまで欲しがるのは電話帳情報を持っているから。いずれも世界で2.8億人以上の利用者を抱えているが、電話帳に入っている人にまでサービス利用を促せば、利用者はその何倍にも広がりさまざまな事業に使えるとの思惑があるのだ。