ネット証券各社の手数料競争が激化している。対面証券を巻き込んだ新たなビジネスビジネスモデルが模索される中、証券業界のあるべき姿、その中での戦略を聞いた。

カブドットコム証券社長 齋藤正勝<br />年明け以降は<br />各社の実力の差が出るさいとう・まさかつ/1966年生まれ。多摩美術大学芸術学部卒。野村システムサービス、第一證券勤務を経て伊藤忠商事のネット証券会社設立プロジェクトに参画。前身の日本オンライン証券取締役などを経て2005年より現職。
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――証券会社はネット、対面を問わず、12月までの第3四半期決算は好調ですね。

 第4四半期からは会社によって差が出るでしょう。去年の春先はアベノミクスで明るい時期でしたが、年末は売り一辺倒。年明けからは、特需の残像はあると思いますが、あとは会社ごとの実力が出ると思います。

 去年は、個人は総じて売り越しでした。投資信託も、特に第3四半期までは解約中心だったでしょう。一方、年が明けてからは、基本的に個人は買い越しです。現物株や投信で新規の買いが入っているかどうかで、対面証券同士、ネット証券同士でも差が出るでしょうね。

 さらに言えば、ネットと対面ではネットの方が有利でしょう。ネットは信用取引の金利収入が安定しているうえ、最近は(相場の)ボラティリティが高いので、日経平均先物などのデリバティブ商品をそろえているネットの方が有利かなと。

――カブドットコム証券の売買委託手数料収入の推移は、しばらく横ばいです。

 お客さんは、競争力のある会社でなければ、売ってくれても、買ってはくれない。松井証券のように、1日の(300万円以上の)信用取引だけ(金利や手数料を)無料にしても、そこは利用されても、手数料がかかる他のサービスは利用されにくくなるでしょう。

 うちは昨年11月から信用取引の手数料を値下げしましたが、SBI証券やGMOクリック証券ほど安くはない。他社からは「中途半端な値下げだね」と言われていましたが、年明けに新規のお客さんが動き始めた時期に、うちの信用取引はシェアを拡大しています。口座獲得数も伸び続けているのはよかったですね。