コスト競争力が鍵となる大型パネルでは、コモディティ化(汎用品)しているテレビ用32インチHDでさえ、韓国メーカーに比肩する水準のコスト競争力を回復している。32インチ、40インチ、60インチなどのサイズを中心に、韓国のサムスン・エレクトロニクス、LG エレクトロニクスなどの大口顧客への供給増、商社を通じた中国メーカーへの拡販などで、亀山第2工場、堺工場(堺ディスプレイプロダクツ、第10世代)は平均9割程度の高い稼働率を維持し、収益を大幅に回復させた。

 中小型では、亀山第1工場(第6世代)はiPhone向けパネルで8割以上の稼働を維持、三重の多気工場(第4.5世代)は中国ブランドなどへのスマートフォン向けパネル供給を中心に増産を行い、高い稼働率を保った。

 この結果、液晶パネル事業の営業利益は第1~第3四半期累計で346億円(うち提携先の南京パンダからの技術移転料推定約200億円を含む)へと急回復した。

従来の延長線上に
持続的な利益成長はない

 同社の中期経営計画では、全社営業利益は来期の15年3月期が1100億円、16年3月期が1500億円となっており、今期の営業利益が1000億円との見通しであることから、来期も当初の会社計画を超えるペースでの収益回復が続く、との期待を抱かせる。

 しかしながら、筆者はここまでの収益回復の延長線で、来期以降を占うのはやや危険であると見ている。

 一つ目の理由は、今期の業績回復は、前述のように既存工場の稼働率上昇と、大幅なコスト削減、技術移転料などの一時的収益に依存しているからだ。今期の設備投資金額(ドイツ証券予想)は650億円(前期比21%減)と極端に少なく(過去最高の設備投資額は08年3月期で3000億円を超えている)、まさに必要最低限の金額である。液晶テレビ、携帯電話、白物家電、複写機などの最終製品部門は、多額の設備投資を必要としないが、液晶パネルや電子部品などの部品関連事業はそうはいかない。

 新技術や要素技術への投資、事業拡大のための能力増強投資が欠かせない。今期は稼働率上昇で増収を続けてきたものの、今後は更なる増産余地が限られている。