アドラーは
マイルドヤンキーを肯定する
岸見 そういう若者は、社会に対してどんな「貢献感」を持っているのでしょう。たとえばコンビニのレジ打ちであっても、社会とつながっているとか、地域の共同体の人たちの役に立っているという意識は生まれるのではありませんか。
原田 そういう意識を持っている人はすごく少ないと思います。
岸見 自分しかできない仕事、他の人が自分の代わりにはなり得ない仕事を求めたりもしない?
原田 はい。ただ、大人から見ると諦めているように見えるかもしれませんが、諦めるべきそもそもの「理想」というものを、設定すらしていないんですよ。
岸見 当人は不幸だとは感じてないのでしょうね。
原田 そうでしょう。その証拠に、若い人たちの満足度は近年ずっと上がり続けていますからね。アドラーが現代の日本に生きていたら、彼らにどんな言葉を浴びせると思います?
岸見 彼らが考える共同体があまりに狭いことを別にすれば、マイルドヤンキーに肯定的な発言をするかもしれません。
原田 えっ、そうなんですか!? てっきり否定的に捉えるものかと……。
岸見 『嫌われる勇気』の中の非常な重要なメッセージである「人生とは、今この瞬間をダンスするように生きる、連続する刹那である」という考え方を、彼らは実践しているわけです。どこの学校に入って、何歳で結婚し、マイホームを買って、収入目標はこれくらいで――といったような人生設計をせず、今日1日を楽しむ生き方を、アドラーは「喜ばしい」と言うのではないですかね。
原田 それはじつに興味深いですね。アドラーの思想に俄然興味が湧いてきました。今の若者の生態に肯定的な思想には、めったにお目にかかれないので。
岸見 ぜひこの対談をきっかけに、学んでみてください。「いま、ここ」のことを真剣に考えるのが、アドラー心理学なのです。
(後編に続く)
(前編を読む)
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岸見一郎/古賀史健著
『嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え』
【内容紹介】
世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされながら、日本国内では無名に近い存在のアルフレッド・アドラー。
「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善していくための具体的な方策を提示していくアドラー心理学は、現代の日本にこそ必要な思想だと思われます。
本書では平易かつドラマチックにアドラーの教えを伝えるため、哲学者と青年の対話篇形式によってその思想を解き明かしていきます。
【本書の主な目次】
第1夜 トラウマを否定せよ
第2夜 すべての悩みは対人関係
第3夜 他者の課題を切り捨てる
第4夜 世界の中心はどこにあるか
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