日本の企業経営には「物流戦略」が足りない

 へえ! 検針作業とは! まったく想像もできませんでしたね。そう言えば、物流業務全般をトータルパック的に請け負う「3PL」というビジネスも生まれていると聞いています。荷主の企業側からすれば、物流に関わるすべてを一括してアウトソーシングするということなのでしょうか?

西村 ええ、「3rd Party Logistics」のことですね。直訳すれば「第三者による物流管理」で、調達物流、工場内物流、在庫管理、配送管理といった「動脈物流」はもとより、「静脈物流」まで含めて企業から一貫して請け負うビジネス。物流の効率化は地球温暖化対策にも結びつくことから、国土交通省も「3PL」事業の推進をサポートしていますよ。

 物流業者に業務を委託すること自体は、以前から行われてきたことですよね? いったい、それとはどこが違うのでしょうか? 金融の世界でもバックオフィス業務やコールセンター業務などのアウトソーシングが進んでいますけど、物流の世界はどこか特殊で、なかなかイメージがつきませんね。

西村 単に配送などを部分的に外部発注するのとは違って、「3PL」では荷主企業の物流部門をパーフェクトに代行するというイメージです。つまり、部門すべてを丸受けし、荷主企業に最適な物流システムを提供するわけです。荷主企業は、この効率のよいシステムを活用してより優れた物流戦略を目指すことができます。

 また、「第三者による」というネーミングになっているように、物流事業者以外がこのビジネスを展開するケースもあります。その場合は、複数の物流事業者を比較して荷主企業のコスト負担が最も軽くなるところを選択するようなオペレーションも可能となってきます。

深刻なドライバー不足を招く根深い問題

 なるほど。だとすると、とかく企業では物流部門におけるコストカットばかりに目が向いて、最終的には下請け・孫請け叩きに結びついたりしませんか? どこか日本には、物流のことを「単に右から左へとモノを動かしているだけ」と軽視する風潮がある気もします。

西村 おっしゃるとおりです。物流にはまだまだ合理化の余地があるのも確かですけど、かといってむやみに物流コストをダンピングすると、最終的に現場の最前線で働く人たちにシワ寄せが来ることになります。

 ITや通信といった産業と比べると、技術革新の恩恵を受けにくい面があることも事実です。結局、人の手に支えられているので、最終的に商品がきちんと届かないという事態を招き、結果として荷主企業が大きなダメージを受けるケースも考えられます。

 ただでさえハードな仕事なのに、収入まで先細りしてしまうなら、誰もトラックのドライバーにはなりたがらないでしょうね。さらに労働条件が悪化すれば、ドライバー不足がいっそう深刻化しかねませんね。

西村 多くの企業にとって物流自体は儲けや付加価値を生まない間接部門に過ぎないので、どうしても目先のコストカットにばかり意識が行きがちです。

 ただ、物流は需給コントロール機能も握っていますから、物流を生産や販売と重ね合わせ、全体最適の中で戦略化していくことが、企業経営にとっては非常に重要だと思いますよ。

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