日本の企業経営には「物流戦略」が足りない

米国企業にはCLO=物流担当取締役がいる

 その点、アマゾンが象徴するように、海外の有力企業は物流を非常に重視しているように思えますね。もっとも、多くの日本企業が"運び屋さん"程度にしか捉えていないなら、逆に物流に重きを置いたビジネス戦略を打ち出すところは、競合他社に大きな差をつけられそうですね。

 実際、楽天とかはアマゾンをすごく意識した物流のテコ入れを行っていますけど、少々挑発的な言い方をすれば、「商売が上手い企業ほど物流にこだわっている」と表現してもけっして過言ではないかも(笑)。

西村 米国企業の場合は、物流部門を統括するCLO(チーフ・ロジスティック・オフィサー=物流担当取締役)という役職者が存在するのが一般的ですからね。川上から川下も至るまで、物流抜きでは企業活動が成り立たないという認識が浸透しているわけです。

 考えてみれば、人の配置を考える人事担当取締役がいるんだから、モノの配送を専門とする取締役がいたって不思議はありません。まさに、サプライチェーンマネジメントが徹底されているわけですね。実は日本人も、東日本大震災などを通じて物流が今の世の中にとっていかに大事であるのかについては痛感しているはずですけど、それでも依然として軽んじているように思えます。

 特に製造業は、大震災やタイの洪水でサプライチェーンが寸断されて事業計画に大きな狂いが生じたことは大きな教訓となったに違いありません。にもかかわらず、物流に関してはもっぱらコストにしか目が向けられていないというのではあまりにもお粗末な話ですよ。

西村 もちろん、物流業界自体にも改善すべき点が散在しています。「3PL」といった新たなアプローチが見られるとはいえ、力関係からすれば明らかに荷主企業のほうが強いこともあってか、日本の物流企業では提案型の営業がまだまだ進んでいません。

 それに、物流に関する情報の「見える化」も進んでいないし、ドイツポストが国際宅配便会社のDHLを傘下に収めたように海外では物流業界のドラスティックな再編が進んでいますが、日本国内ではあまり見られません。

 物流は重要なサービスでありながら、表舞台には立たないためにそのことがなかなか意識されず、正当な評価が成されていない。私がこの業界に属していたら、それこそ黙ってはいられませんよ。

 だけど、不遇に関してただグチをこぼしているだけで意味がなく、物流業界の自助努力も必要でしょうね。ドイツポストなんて、物流において世界の頂点を狙っているわけですから、日本の大手もそれに負けないぐらいの気概をもってもらいたいところです。まさか、そのような野望を抱いているのは、ドイツポスト同じく元国営だった日本郵便だったりして!?

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