西村 ははは、それはどうでしょうか(苦笑)。冗談はともかく、日本型の物流システムを海外に売り込もうとする動きが出てきているのは確かです。
ターゲットの中心に位置づけている地域はアジアで、とりわけASEAN諸国において積極展開を図ろうとしており、国土交通省もそれを後押ししてまさにオールジャパン体制で取り組んでいます。
ASEAN地域にも進出
クーラーボックスでの配達を「低温物流」に
原 すでに宅配便においては、中国をはじめ、東南アジアにも「低温物流」といった日本生まれのサービスが拡大しつつあります。東南アジアには熱帯地域も多いですが、それだけに温度管理は非常に難しい。単に温度だけではなく、トラック走行やドライバーのレベルまで、GPSや小型カメラまで導入して全体として高い質のサービスを提供しているようですね。
トラック走行を徹底的に管理したり、ドライバーの教育にまで力を入れて質を保つといったことはいかにも日本らしい緻密なシステム。きめ細やかな対応の日本型物流が海外でも広く受け入れられるポテンシャルを秘めているのは間違いなさそうですね。
西村 ASEAN諸国では、生活レベルの向上で、コンビニや外食産業が増えてきました。これまでクーラーボックスで運んでいた部分が、とてもそれでは追いつかなくて、企業の戦略として物流体制の整備が必要になってきた、ということだと思います。
日本の高品質なサービスは特にアジア諸国に受け入れられやすいですから、物流もアジアで伸びる業種の1つになっていくと思います。
ASEAN市場を巡って、欧米型の物流システムと日本型の物流システムがせめぎ合っているところなんですよ。欧米型はFEDEXやDHLなどが代表的ですが自社で貨物機まで持って全てやってしまうので、規模のメリットがあります。ただその分サービス自体はやや紋切型になりがちです。日本型は先ほどの話のとおり、オーダーメード型のきめ細かいサービスや環境にも配慮している点が売りです。
さらに日本では、もはや国内とアジアの物流を一体で考えてサプライチェーンを構築するという大きな流れも出てきています。物流業界も、今後グローバルなビジネス展開がどんどん増えてきますよ。
けれど、それができるのは資本力のある大手に限られてしまうのも事実。中小は特長のあるニッチな物流を提案することも大事になります。
原 「文化財を運ぶ」、なんていうのはそうしたものの1つですよね。高度な技術が必要でしょう。
西村 美術品の輸送などはすごいノウハウが必要です。危険品の輸送も1つのジャンルとしてありますよ。やはり日本の物流はそうした分野に強い傾向がありますから、創意工夫を凝らした特徴的なところが伸びていく、という動きも出てくると思いますね。
(構成/大西洋平 撮影/和田佳久 撮影協力/日本自動車ターミナル)