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スマートフォンの理想と現実

モバイルの高度化は構想から実現、普及へ
いよいよ動き出した産業の地殻変動

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2014レポート【後編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第60回】 2014年4月10日
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 1月に開催されたCESで、Xperia Z1sと同Z1 Compact、そしてCoreを発表済みだった、という事情はあるのだろう。しかしサムスン電子が先進国の買い換え需要に備え、保守的ながらも大々的にギャラクシーS5を打ち出してきていたのに対して、ソニーはあまりにプレゼンスが小さかった。

 MWCでの印象を総合すると、もはやソニーはグローバル市場を重視しておらず、日本国内の需要だけでしのいでいこうと考えているのではないか、という印象を受けた。実際に、Xperiaの国内販売は極めて好調で、もはや「Android=Xperia」という状態に近づいている。おそらく今年はこの流れが加速することだろう。

 ソニーにとっての「ホーム」でもある日本という特定市場で、一定の規模の需要が期待できるなら、海外のことを考えなくてもやっていける――実際、ソニーの開発者の知人と話していても、少なくとも今年は日本市場重視だという話をしていた。

 それはそれで、正しい判断だと思う。しかしそうだとしたら、ソニーはバルセロナへ何をしに来たのか、やはりよく分からない。

デバイスを売るためにプロダクトを作る

富士通のブース Photo by Tatsuya Kurosaka

 かたや富士通は、MWC2013とまったく同じようなブースだった。場所も大きさも、トーン&マナーも、すべて同じ。フランス市場に投入する「らくらくスマートフォン」の新機種も、キープコンセプトであるがゆえに、昨年と同じような印象である。率直に言って「既視感」そのものだった。

 たかだか2年でHTCの栄枯盛衰がはっきりするほど、変化の激しいスマートフォン業界で、昨年と似たような展示ということ自体が、まず驚く。正直、時間が止まっているかのような印象だ。

 らくらくスマートフォンは、フランスでは一定の評価を得て、新機種の投入や拡販が続いているという。それ自体は喜ばしい話だが、そこからの広がりはないし、国内でもシェアを取れていない。また、国内にはARROWSがあるが、Xperiaに後れを取っているのは言わずもがな。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

「スマートフォンの理想と現実」

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