『ばけばけ』第29回より 写真提供:NHK
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第29回(2025年11月6日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
あのタエが物乞い?
トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)は通りでタエ(北川景子)の落ちぶれた姿を目撃しショックを受ける。
タエは通りすがりの人にお金を恵んでもらうが、頭を下げないものだから、施しを奪い返されたうえ、叩かれる。
タエの態度もどうかと思わせる描写だが、そもそも物乞いをするような人ではない。世が世ならかなりの上の身分の人である。
あの誇り高く、常に華やかな身なりをしていたタエの変わり果てた姿にトキはその前を通ることができず、もと来た道を走り去った。
地べたに座って、身なりも貧しくなっているが、タエの姿勢は正しく、表情も凛としていた。だからこそ余計にその場から浮いていて、余計にに痛々しい。
家に戻ると、錦織(吉沢亮)がまた訪ねて来た。
妙に声が高い。かなりよそ行きの声になっている。
フミ(池脇千鶴)がトキの「ええ人なんじゃ?」と疑うが、「奥さんいるって」とトキはあっさり否定。東京編で妻が松江にいることを明言していた。その奥さんはまだ出てきていないが、妻帯者であり、トキと恋仲になる可能性をあらかじめ封じている。
これが『あさが来た』(2015年度後期)だと、ヒロインのビジネスパートナーの五代友厚(ディーン・フジオカ)は史実では妻がいたが、ドラマではボカしていた。脚本の大森美香が脚本に妻のことを書いたが、カットされたと語っている(拙著『みんなの朝ドラ』より)。
少女漫画的三角関係、ヒロインが本命とライバルの両手に花状態はテッパン設定だからかと思うが、『ばけばけ』ではその手の夢・描写は選択されないようだ。







