「ビジネスモデル」をあえて定義するならば

 前回、「ビジネスモデル論」の在り方は3期に分かれ、2002年以降の第3期では、3つの意味づけがされている(つまりこの3点においては「使える!」と思われている)、と述べました。(第82講 参照

1.持続的競争優位の源
2.イノベーションの乗り物 Vehicle for Innovation(AdobeのPDFなど)
3.イノベーションの素 Source of Innovation

 今回は、最後の3について論ずることにします。

3は「ビジネスモデルの変革こそがイノベーションの源だ」とする考え方です。クレイトン・クリステンセンは、まさにアップルのiPodやiPhoneこそがその事例だと言います。

 ただこの議論をするためには、仮にも「ビジネモデル」なるものを定義しなくてはなりません。歴史上・学問上の個別定義の可否を論じても価値がないので、ここでは、諸主張を整理したものとして、私自身の答えを示すに留めます(面倒な方は、次の小見出しまで飛ばしてOKです)。

 まず、「ビジネスモデルとは、旧来の戦略的フレームワークを拡張するためのコンセプト・セットであり、その目的は多様化・複雑化・ネットワーク化への対応である」といえます。

 具体的には、5つのレイヤーを持ち、

<1>ターゲット(顧客):ユーザーや決裁者だけでなく、ステークホルダー全体。いわば、そのビジネスに関わるダイジなプレイヤー全部が「顧客」
<2>バリュー(提供価値):ステークホルダー個々への、トータル・バリュー・クリエーション(TVC:全体価値創造)
<3>プロフィット(収益の仕組み):「フリーミアム・モデル」などのいわゆる収益モデル。提供価値への対価をどう自社に掻き集めるかが、レベニュー・ストリーム(収入流)で、コストと組み合わせればプロフィット・フォーミュラ(収益方程式)となる
<4>オペレーション/リソース(ケイパビリティ):これらを実現するための、オペレーションや資源を他社や競合との協調まで含めての「バリューネットワーク」として考える

 この<1><2>が、従来の戦略論での「ポジショニング」(やバリュー・プロポジション)といえるでしょう。それと<4>ケイパビリティをつなぐものが、<3>収益の仕組み、です。

 そして、この<1>~<4>を統合したものが「ビジネスモデルの視点」からの経営戦フレームワークなのです。
 

 ポーターが1985年に唱えた「5つの力(Five Forces)」では、自社を取り巻く5種の勢力を「自社・業界収益を圧迫する力」として捉えましたが、現代の「ビジネスモデル」という概念では、取引先や顧客、競合すらを「価値や収益の源泉」、そして「自社と協調しうるプレイヤー」として捉えているわけです。

 その中で価値を生み出す構造(ケイパビリティ)は、自社内の「バリューチェーン」などに留まらず、より幅広い「バリューネットワーク」となっていくのです。