DPS(Digital Publishing Suite)の開発責任者である、アドビシステムズ シニアディレクターのベン・チョイ氏 Photo by DOL

 文字中心の書籍ではない、ファッションやインテリアなどのグラフィカルな紙の雑誌も「電子雑誌」としてPCやモバイル端末で読めるようになってきたが、コンテンツの編集作業に多大な労力が必要だった。

 なぜかというと、電子雑誌では書籍と違い、写真やグラフィックの扱いが複雑だからだ。紙の雑誌のイメージを踏襲しつつ、細かくデザインし直す必要がある。またそれだけでなく、動画やクーポンの発行など、双方向の機能も盛り込みたくなる。

 アドビの「DPS(Digital Publishing Suite)」は、この制作行程とコンテンツ管理を簡単にするツールだ。具体的には、紙媒体の制作過程で広く使われているDTP(デスクトップ・パブリッシング)ツールである「InDesign」などのデータをそのまま取り込んで、デザインイメージを踏襲したままコンテンツの作成ができる。さらに、プログラミングの知識がなくてもスマートフォン、タブレット用のアプリを作成することもできるという。

 欧米をはじめ、日本でも小学館など多くの出版社がデジタルメディアの制作ツールとして導入しており、雑誌のデジタル版やアプリの開発に利用している。

 このツールが今、出版業界だけでなく、一般企業の中で利用され始めているという。どのように使われているのか。

 DPSを含むデジタルパブリッシング関連ツールの開発責任者である、アドビシステムズのベン・チョイ シニアディレクターに話を聞いた。

社員のモバイルデバイスに
業務支援のリッチコンテンツを送り込む

――「DPS」は、出版業界以外にどんなところで利用されていますか?

 発売当初は出版業界が中心でしたが、近年、それ以外の利用が増えています。アドビが「コーポレート・パブリッシング」と呼ぶ企業内の情報共有やコンテンツ管理ツールとして、業界・業種を問わず利用してもらっています。すでに出版社向けと一般企業の導入比率はほぼ半々で、今後は企業向けが伸びていくでしょう。

 コーポレート・パブリッシングとは、従来は紙で社員に配布していた業務用の資料や製品カタログなどを、タブレットやスマートフォンで閲覧できるインタラクティブなデジタルコンテンツとして配布する仕組みのことです。