爽やかに崖から落としてくれた
ソニーの協力に感謝しています

――天貝さんは、もともとソニーが保有していた静脈認証の特許の使用権を使って事業をスタートされました。ソニー社内にいては、事業化できなかったのでしょうか。

 ソニーには研究開発会議、通称「ケンパツ」というのがあって、06年の初夏に行われたケンパツで携帯電話に載せたのを中鉢さんが見て、感激して、「これはすごいぞ、この技術を研究所に置いておくのはもったいないから、インキュベーションしよう」と言ったことが、事業化へ動き出したきっかけだったんです。そこで、事業化のために私が拝命しました。

 そこでわかったのは二つあって、先ほどから説明したようにすごい可能性があるということ。それからもう一つは、この技術を使って事業化するのは、ソニーが不得意な社会インフラやセキュリティの世界だったということでした。

 私もソニー社内で事業化へ向けていろいろとやりましたが、予算がついたり、ソニー社内でプライオリティが高くなったりはしなかった。それに、だんだんソニー自体の調子も悪くなってきてしまったんです。

 それで、外に出て、成功して恩返ししようと決意し10年12月に創業しました。特許に関しては昨年、ソニーから買い取りました。

 いま、トルコ政府と組んで国の医療機関全体に静脈認証システムを入れようというプロジェクトを数社で受注して取り組んでいるんですが、仮にソニーのなかで事業をやっていたら、「ソニートルコを通せ」とか大企業ならではの足かせがあったと思う。

 世界中の販売会社や社内のネットワークを持っているのですが、実際に私たちのやろうとしている事業で活用できるものはあまり無かったと思います。小回り、スピード、即断即決、こういうものを得るためにも外に出て良かったと思います。