安倍政権の新たな成長戦略が、来月にも発表されようとしている。成長戦略と言えば、法人税の引き下げ、医薬品のネット販売解禁、女性の活用、雇用・労働分野の規制改革など、個別の政策が脚光を浴びがちである。もちろん、これらの改革はどれを取っても重要であり、これらに加えて、教育改革や農業の6次産業化など、個別の政策は国家戦略特区でその一部からでも実施に移されることが望ましい。

ただ、法人税の引き下げを除けば、それらの効果は漢方薬のようなものであり、企業を活性化して日本経済を一気に浮揚させるようなものとは言い難い。特に、もし安倍政権が、世界の投資家に、引き続き「バイ・マイ・アベノミクス」と言い、日本企業の株を積極的に保有してもらい、株価を維持向上させることを望むのであれば、成長戦略の視点は、すべからく投資家の目線に立っていなければならない。

「5本の矢」は相互に関連している

 筆者は連載第32回にて、「成長戦略に必要な5本の矢とは」と題して、一貫性のある政策連携によって、企業の活力を上げることによる成長戦略が必要であることを論じると共に、自民党の日本経済再生本部等でも同様の説明をした。

 それから1年余の間に、筆者が提言した政策のほとんどに手がつけられ、一部は実現している。マスコミは派手に取り上げないが、投資家から見た場合、これらの施策こそが成長戦略の本丸であることに疑いの余地はない。本稿では、筆者が提言し、その後実現したことと、未だ実現していないことを整理した上で、6月の成長戦略に盛り込まれることが期待される事項を述べてみたい。

 筆者が連載第32回で示した「5本の矢」は、図の中で赤く囲んだ施策である。5本の矢の特徴は、すべての政策が投資家の目線に立って考えられていることである。すなわち、企業はコーポレートガバナンスを強化し、投資家は議決権行使等を通じてそれを監視する。

(注)ニューホライズン キャピタル作成