弊社は出版社やIT事業社、広告代理店などから原稿制作の依頼を請けるプロダクションなので、将来独立した際に仕事を回してくれる可能性が高い取引先が弊社には多数あったのである。

 結果、彼は2年の月日を弊社で費やし、独立を果たした。この時点で彼は31歳だった。彼は今や個人事業主として様々なクライアントから仕事を引き受ける立派なフリーライターになった。

 この事例が示すとおり、結局、独立には「能力」を持ち、「顧客」を抱えるという2点が大事だということがよくわかる。彼は弊社に転職する以前からそれを見抜いていたのだ。

起業家はその実積で承認を得るべき
承認を得るための独立は本末転倒だ

 もちろん「型」があれば「型破り」は必ず存在する。実績のないまま学生時代から起業して事業を軌道に乗せる人もなかにはいる。本当に革新的なものは型破りから生まれる気もする。だから僕は独立する若者を止めることはないだろう。家庭環境や社会情勢的に、失敗を許されているのも若者の特権だったりする。

 ただ、理想的なビジネスモデルやサービスがあるだけで、顧客がいない事業というのは必ずダメになる。たとえばNPOなどであれば社会貢献のためのNPOであるが、社会のためというよりも運営者を自己満足させるためのNPOなんじゃないの? と思う団体もある(もちろん、すべてのNPOがそうだとは思わないが、そういうNPOも存在する)。またITベンチャーとしてちょっと面白いサービスを立ち上げたものの、それを広める営業力がなかったり、技術的な能力不足でせっかく良いアイディアなのに残念な結果に終わる企業もある。

 起業家は、その実績によって他者からの承認を得るべきである。だから、承認を得るための独立に走ってはいけないと僕は思う。

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