この冬一番の話題作にして、3Dや視覚効果を駆使した大作として、使われている技術から興行の行方まで、あらゆる面で映画界から注目を集めている作品──。それが、12月23日(水・祝)より公開となる『アバター』だ。
『アバター』は『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督の12年ぶり新作。1997年に公開された『タイタニック』は、アカデミー賞史上最多11部門に輝いたほか、全米興収6億ドル(約540億円/1ドル90円計算)、全世界興収18.4億ドル(約1656億円/1ドル90円計算)と、共に歴代1位を記録。今なお、その記録が破られてないお化け映画だ。日本でも興収262億円と、日本公開の洋画では1位をキープし続けている。
だが、納得いくものを作るというこだわりゆえ、ギリギリまでポストプロダクション(映画の仕上げ)作業を続けるのもキャメロン流。それゆえ今回も、公開まで1か月を切った今なお、その全貌はベールに包まれたままだ。そんな『アバター』の世界を、日本で一番知り尽くしている20世紀フォックス映画 マーケティング本部・本部長の中瀬桂子氏に語ってもらった。
宣伝は、超タイトなスケジュール続き
中瀬桂子(Nakase Keiko)……20世紀フォックス映画 マーケティング本部・本部長。日本ヴィックス株式会社、クラフト・ジャパン株式会社、パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン株式会社など、外資系企業を経て、2007年、20世紀フォックス映画へ。現在、マーケティング本部長。大阪府生まれ。 |
徹底した作り込みが行われ、ギリギリまで製作作業が続けられている『アバター』。良い作品になればとは誰もが思うが、そうとばかり言ってられないのが宣伝スタッフだ。宣伝が遅くなれば遅くなるほど、『アバター』という映画の認知度が、一般に広がっていかないからだ。そんな難しいポジションを担っているのが中瀬氏。「大変なのでは?」との質問には、躊躇なく「ものすごく(笑)」という答えが返ってきた。
「まずは、大変なことからお話ししましょう。監督は非常にこだわる人で、ポスター1つの承認を取るにも相当な時間がかかってしまうんです。例えば、全世界共通の縦型ポスター。この承認が降りたのも、実は先週末(11月21日)のこと。最初に私が原型を見たのが9月でしたから、完成まで2か月半もかかっていることになりますね。
なぜ時間がかかるかというと、アメリカ本社も監督の指示通りに修正しては、毎日のように見せているのですが、映画の製作自体が遅れていて、もらえる時間が少ないから。短い時間に見せては意見を伺い、また変更という繰り返し。最終的にはデザインも相当変わり、原型を留めていないくらいになりました」