海外進出先でマーケティング
人材を確保できない理由

 ところが、アジアマーケットで強い支持を得た日本ブランドが、最近ではグローバル企業の攻勢に遭っているという話を耳にします。

 苦戦の理由はさまざまあるとは思いますが、大きな原因の一つは、優秀な人材の確保不足とマーケティング戦略の未熟さだという指摘があります。

 私は今の会社を設立する以前、フィンランドの食品素材メーカーで15年間、アジアマーケットの責任者をしていました。幸いにもその会社は、業界では名の通ったブランドを持っていたため、アジア各国にオフィスを開く際の人材確保に苦労することはありませんでした。

 その国の優秀な人材の中から事業に合うキャリアと経験を持つ現地スタッフを採用し、私が東京から定期的に出張して管理業務を行っていましたが、基本的にマーケティング戦略は現地スタッフの主導で行っていました。そのほうが、各国の商習慣やメディア環境に合わせ、最適なアプローチを行えると考えていたからです。

 一般的に、日本企業がアジアに進出する際は、現地支社のトップ、販売、マーケティング、開発、製造といったそれぞれの部門の責任者は日本から送り込まれ、スタッフとなる人材が現地で採用されるケースが多いようです。

 当時私のいた会社は、本業以外に日本のメーカーがアジアに進出する際のコーディネートも行っていました。現地スタッフの採用支援もしていた中で、製造や経理などのスタッフは比較的容易に見付けることができたのですが、マーケティングスタッフの採用にはいつも苦労させられたのです。

 アジア諸国でマーケティングのスキルや経験に長けている人材の多くは、MBAをはじめ、かなりハイレベルで専門的なマーケティングの教育を欧米で受けていて、英語力はもちろん、交渉力もあります。さまざまな消費者調査に基づき、欧米流のIMC(統合型マーケティング)をベースに高度なマーケティングアプローチ手法を駆使し、ダイナミックなキャンペーンを仕掛けることこそマーケティングの醍醐味だという意識を持っています。

 このような欧米式のマーケティングに慣れている優秀な人材は、マーケティング活動をほとんど広告会社に頼ってきた日本企業の風土に馴染むことが難しいというわけです。