先週、立て続けに同じような話を聞きました。異なる2社のマネジャーが異口同音に、こう言うのです。

 「部下があれこれ言ってくるけど、何をどうしたいのかわからないときは、『で?』って一言で返すんです。一、二度言っても大抵ダメで、何度も繰り返します。それで、部下は委縮するんですよね、周りもシーンとなるし…・・・。そのうちだんだん相談に来なくなるし、嫌われてるのが何となくわかるし…・・・。スタイル変えなきゃって思うんですけど、なかなか難しくて…・・・」

 聞いた瞬間、「それはまずいでしょう」と心の中で叫んだものの、聞いていくうちに何となく「そんなスタイルも必要ではないか」と、いう思いがよぎりました。

信頼できそうな立派な上司が
部下の心を掴んでいるとは限らない

 教科書的に言うと、これは正しい部下の指導法ではないのかもしれません。でも、私が「それもあり!」と思ったのは、理屈ではなく、そのマネジャーたちの人柄です。

 2人とも話しているうちに、素直に「素敵なマネジャーだなぁ」と感じたのです。私と話しているときは、ニコニコといい笑顔でしゃべるし、豪快そうで裏表がない誠実な人柄が伝わってきます。自分の仕事にも厳しそうで、妥協がない感じです。

 「この人なら信頼できる」と思わせる雰囲気があるのです。だから、「この人の素直な言動を無理やり変えることは、何か大切なものをなくすのではないか」と直感的に思いました。

 その大切なものとは、相手を一人前として認めたうえで、「君は何をしたいのか?」と妥協することなく追求する厳しさです。自分に対する厳しさがないと、なかなか他人を追求し切れるものではありません。

 それは、「自分と仕事をするなら、このレベルでかかってこい」と言うメッセージでもあります。