まさに「6次産業化」の成功事例で、存続の危機に直面する全国各地の過疎自治体にとって垂涎の的となっている。もっとも、畦地履正社長は「私たちは消費者のみなさんとも一緒にやっていますので、6次産業ではなく10次産業(6プラス4)だと考えています」と語る。

ローカル、ローテク、ローインパクト
「四万十ドラマ」が守り続ける経営理念

 株式会社「四万十ドラマ」の歴史は意外に古く、設立したのは今から20年前の1994年のこと。地元自治体(旧大正町と旧十和村、旧西土佐村が出資)による第三セクターとしてスタートした。社員は当時、農協から引き抜かれた29歳の青年のみ。今の畦地社長である。文字通りゼロからのスタートだったが、「四万十ドラマ」は明確な経営理念を高々と掲げていた。

ローカル、ローテク、ローインパクトを経営理念として掲げる畦地履正社長。そこには、旧十和村の森林組合長の気骨が受け継がれている

 1つは「ローカル」である。これは「四万十川を共有財産として豊かな生き方を考える」というものだ。そして、「ローテク」。「地元の素材・技術・知恵にこだわったものづくり」である。3つめが「ローインパクト」で、「四万十川に負荷をかけずに風景を保全しながら活用する」といった考え方だ。社名の「四万十ドラマ」には、「最後の清流・四万十川から新たな物語をつくる」という意味が込められていた。

 これら3つの理念の下、「四万十ドラマ」は船出した。まずは地元産品を活用した独自商品の開発に知恵を絞り、販路開拓に力を入れた。バイヤーに必ず現地・四万十で生産者に直接、会ってもらうなど、顔の見える関係をなによりも大事にした。

 また、会員制度をつくり全国にネットワ―クを広げていった。これが商品開発に止まらず、交流や観光といった「四万十発着型産業」へと展開していった。 

 事業開始から3年足らずでヒット商品が生まれた。地元のヒノキの端材を活用した芳香材「四万十のひのき風呂」だ。さらに、地元特有のかおり米「十和錦」や地元の生産組合と共同開発したペットボトル入り緑茶「しまんと緑茶」など、四万十ならではのヒット商品を連発した。売り上げは年々増加していった。

 業績の好調ぶりが行政からの完全独立につながっていった(市町村合併の枠組みの問題も要因の1つと思われる)。2005年に旧3町村が所有する株式をすべて会社側が買い取り、地域住民を対象に新たな株主を公募することになった。