トヨタ自動車は、インターネット3D仮想空間内に、未来都市「TOYOTA METAPOLIS(トヨタメタポリス)」を10月1日に正式オープンした。
同仮想都市でアバターを設定したユーザーは、仮想通貨を使い、18モデルのバーチャル自動車を購入、都市内での走行が楽しめる。他ユーザーと車に同乗してチャットを楽しんだり、好みの音楽を選んでBGMとして流すというようなことも可能だ。さらには、仮想通貨を獲得できるゲームやアトラクション、メタポリス会員のための居住空間、新車発表会などさまざまなイベントが行われるイベントホールなども用意され、未来型のカーライフを体験しながらトヨタ自動車が発進する最新情報に触れられる内容となっている。
同社は、この仮想空間をすでに4月17日から試験運用しており、来場者は10万人を突破、新たな情報発信媒体として大いに期待を寄せているようだ。
3Dのバーチャルカーを所有し、いろいろなスポットへのドライブや、アトラクションに参加できる。 |
コンテンツ内容や都市デザインを実写・アニメ映画監督の押井守氏が監修したことからも窺えるように、同社がターゲットにしているのは、若年層。このような取り組みの背景には、言うまでもなく、深刻な若者の自動車離れがある。
2007年度の国内新車販売実績が25年ぶりの低水準となったことが示すように、自動車業界を取り巻く状況はきわめて厳しい。その原因として指摘されているのが、若者の自動車離れだ。
9月にモバイルリサーチ事業を運営するネットエイジア株式会社が行ったネットリサーチ(全編Flash型ネットリサーチ「リサーチTV」により実施、男女20歳~59歳の1600名より有効回答)によると、「自動車に興味を持ったことがない」と回答した割合が、男性では20代前半で26.3%、20代後半で25.6%。4人に1人以上の若年男性が車に対する関心を持っていないということになる。
嗜好の多様化、燃料をはじめとする自動車維持費の上昇など、原因は複合的だと思われるが、少子高齢化という大きな流れとあわせて考えると、自動車業界にとって市場の縮小傾向は明らか。潜在的ニーズの掘り起こしに真剣にならざるを得ない状況であると言えるだろう。
ちなみに、同リサーチでは、30代以上では車に興味を持ち始めた時期を「小学校の頃」と答えた人がもっとも多かったのに対し、20代では「大学生の頃」が他の時期を上回るという結果も出ている。自動車免許を取得するまでのティーンエイジャーの時期、自動車への興味関心が「空白状態」になることが、若者の車離れの根本にあると考えられる。
すなわち、この年齢層をターゲットに情報を投下し、自動車への関心を醸成する「トヨタメタポリス」は、トヨタ自動車及び自動車産業の長期的な命運を賭けた取り組みのひとつだと捉えていいだろう。目に見える成果が出るのは、おそらく将来ということになるだろうが、その分、運営サイド=トヨタ自動車は、かなり長期にわたり資金とアイデアを注入しつづけると推測できる。ターゲット年齢層を遠く離れたクルマ好きオヤジ世代も、上手に活用して、楽しませてもらおうではないか。
(梅村千恵)