個別最適は得意だが
全体最適が不得意な日本企業

 ブランドとしての考え方や価値観が十分に共有できないことで、シナジー効果が発揮されない事例は、M&Aに留まらない。

「個々の商品は強いのだが、いまひとつコーポレートブランドとつながりがない…」
 「各商品は、事業部が個別にマーケティング活動を行っているので、バラバラな展開になっており、とても同じ会社の商品とは思えない…」
 「事業部門が扱う各商品に対して、コーポレート部門の立場からは口出ししにくい…」

 最近このようなジレンマに悩む日本企業の方々からのご相談を多く受ける。

「個別商品にとって最適な戦略を取る」ことを使命とする各事業部と、「既存の事業・商品、新規事業・新規マーケットを含めて、効果的に会社全体の価値を高めていく」ミッションを担うコーポレート部門の間で、こうしたコンフリクトが生じているケースが多く見受けられるのが日本企業の現状である。

 今後、M&Aも含めた企業再編がこれまで以上に加速することが予想される。その中で企業全体の価値を効果的に高めるために、今こそブランドの「ポートフォリオマネジメント」を見つめ直さなければならない。

「ブランドストーリー」を軸に
ポートフォリオを最大化するグローバル企業

「ポートフォリオマネジメント」とは、一つの企業が保有する複数の事業・プロダクトの価値最大化を図る経営手法である。グローバルのリーディングブランドは、「ブランド」をうまくマネジメントし、効果的に自社のポートフォリオを拡大している。多くの日本企業と大きく異なるポイントは、「ブランドストーリーを中心に据えて、ポートフォリオをマネジメントしている」という点である。

 各事業、商品への遠慮も、部署間のコンフリクトもない。そこにあるのは、「いかに、自社のポートフォリオを効果的に最大化するか」という、極めてシンプルな考え方である。

 ブランドストーリーを、ブランドのコンセプトを美辞麗句で書き綴ったものと考える人がいるが、まったくの誤解である。ブランドストーリーとは、そのブランドがどのように効果的にターゲット顧客を魅了し、今後長きにわたって事業成長を促していくか。まさに、そうした事業戦略をブランドの視点から翻訳したものである。