中国の安定的な統治のためには、大きな経済成長を続けることが必須である。過去10年のような年10%の経済成長は望めないが、7%程度の経済成長を達成していかないと、国内の不満が社会問題を暴発させ、それがひいては政治的混乱に繋がっていく。

 習近平総書記は、2020年までに市場が中心的役割を果たすという概念を掲げているが、そのためには国有企業の改革を含め、既得権益の打破、過剰生産設備の削減、金融改革など、血の出る改革を追求していかざるを得ない。

 同時に、中国はすでに情報社会であり、大衆運動が容易になっている。6月4日の天安門事件25周年記念日の異様な警戒ぶりや、ウイグル人によるテロと言われる事件について厳格な措置を行った背景には、大衆運動が常に起こり得るという危機感がある。

 中国は経済改革を進めていくために、強権的に秩序の維持を図っていく可能性が大きい。同時に、国民の意識を共産党政権につなぎとめておくために、政権は中国の大国主義的ナショナリズムも活用している。

 習近平総書記は、「中国の夢」というキャッチフレーズの下で、アヘン戦争や日清戦争に始まった中国の屈辱の歴史は終わり、中国は再び世界の冠たる大国として浮上してきたと強調し、国民の意識を高める行動に出ている。

共産党体制維持のためのナショナリズム活用
「中国の夢」と「新型大国関係」

 その流れのなかで、中国の対外政策にとって中核的位置を占めている対米関係に「新型の大国関係」というキャッチフレーズを使い、米国との対比で中国が大国であることを示そうとしている。中国は、南シナ海や東シナ海、あるいは尖閣諸島に関しても、ますます行動をエスカレートさせている。

 ベトナムとの関係では、西沙諸島海域において大型石油リグを持ち込み、一方的に開発を進め、強い反発を買っている。フィリピンとの関係でも、南沙諸島で滑走路建設を始め反発を買っている。日本との関係でも、防空識別圏において、人民解放軍の空軍機を自衛隊機数十メートルのところまで近接させている。