Photo:代表撮影/REUTERS/AFLO
オバマ大統領が4月23日から25日まで日本を公式訪問し、尖閣(中国名・釣魚島)問題については日本を明確に支持する態度を表明した。それはアメリカが2010年に発生した中国漁船衝突事件以来、一貫した態度であり、日本公式訪問によって米国の最高指導者がその態度を確認したこととなる。表面上、北京では外交部が中国駐在のアメリカ大使、日本大使を呼んで、「厳重な申し入れ」をしたが、とくに冷静さを失った行動はなく、それ以上の批判の声も聞こえてこない。
むしろ、もっとも関心を寄せている日米TPP(環太平洋経済連携協定)交渉では、オバマ大統領の滞日中の「大筋合意」が見送られたことで、中国は胸をなで下ろした。アメリカがTPPによって中国を牽制していくという狙いは、中国・東アジア地域では言わずもがなだ。オバマ大統領の日本訪問は、安全保障の面では安倍政権を十二分ほど満足させたが、TPPではこれといった成果を挙げられなかった。TPPにおいて中国は対策を講じる時間を少し稼ぎ、近隣諸国とのFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などの交渉をこれから速めていく。(在北京ジャーナリスト・陳言)
尖閣では日中の世論は激しく戦うが
保釣運動推進も、戦争もあり得ない
オバマ大統領の訪日で、日米間に安全保障面でいくつかの合意があった。それは、(1)尖閣問題では日米安保条約を適用することを確認し、(2)日本の集団的自衛権の行使を容認し、(3)サイバー分野で日米が「緊密な連携」を取ることなどが挙げられる。
25日に発表された日米共同声明には、安倍晋三首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認について「米国は日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」との文言が盛り込まれたことに、「首脳会談の声明にしっかりと書き込まれたことはよかったと思う」と、菅義偉官房長官は同日の記者会見で手放しで評価した。
一方、中国では日米の首脳会談の内容などが刻一刻と報道され、尖閣問題についての動きも、もちろん詳細に報道された。しかし、今まで以上に激しい感情表現を用いたコメントはなされなかった。