現代、市場には商品があふれ、商品を売ることが難しくなっています。しかし一方で、人件費は固定的で、仕入れと同じようには柔軟に変化させることはできません。商品を売ることがより難しくなっていく世の中で、人件費を抑制しようとする動きは、今後もどんどん強くなっていきます。

 今回のホワイトカラー・エグゼンプションは、一部の職種に限られますが、今後、すべての正社員に適用するように検討されるでしょう。

 この流れは必然ですし、企業が生き残っていくために、そしてその企業が労働者に働く場を提供するためにやむを得ない判断だと、個人的には感じています。

 しかし、マルクスが指摘した点は、常に念頭に置かなければいけません。つまり、企業が恣意的に「成果物の質」「ノルマの量」を変えないようにしなければいけないのです。

 そして、成果が出ないからといって給料を恣意的に引き下げる事態になってはいけません。

 今回の制度検討に対し、労働者が考えるべきことは、長時間労働を防ぐということよりも、給料単価自体を引き下げられないにすることだと、マルクスの指摘から感じました。


著者プロフィール

労働時間は増え、給料は下がる!?<br />誰もが知っておくべき「ホワイトカラー・エグゼンプション」の本当の怖さ

木暮太一(こぐれ・たいち)
経済入門書作家、経済ジャーナリスト。ベストセラー『カイジ「命より重い!」お金の話』『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』『新版 今までで一番やさしい経済の教科書』など著書多数。慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自主制作した経済学の解説本「T . K論」が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。


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